株式会社オヤノコトネットは、7月14日(土)・15日(日)、東京・有楽町にて「第5回オヤノコト.エキスポ」を開催した。
「オヤノコト.エキスポ」は、高齢の親のことが気になる40〜50歳代=オヤノコト世代を対象にしたイベント。シニアの暮らしに役立つ商品やサービスの展示、多彩な講師陣によるセミナーという盛りだくさんな内容で、毎年人気を集めている。
セミナーの中から、14日の午後に行われた三井のリフォーム住宅生活研究所所長・西田恭子氏による「リフォームで考える安心・快適な“親の住まい”」を紹介する。
セミナーでは、まず、60歳以上の住まいに関する公的なデータを提示し、シニア世代の住まいの状況や住まい観について解説した。
そこから見えてくるのは、「夫婦2人暮らしの世帯が多く、持ち家率は9割に迫り、住居の築年数は31年以上が半分近く。将来、体が弱った時は今の家に住みたいと考えている人が6割強」というプロフィール。
また、「家屋や土地という資産を子どもや孫に残したい」と考える人は5割弱で、10年前と比べて1割減少。逆に、「自分の老後を豊かにするために資産を活用したい」という人が増加しており、「子どもに面倒を見てもらわずに夫婦で暮らし続け、高齢期の住まいは、自宅を基準に考えている人が多いことがわかります」。
三井のリフォーム住宅生活研究所では、同社の受注実績をもとにシニア世代のリフォームについて調査を実施。それによると、大規模リフォームを行うのは60代前半が中心で、築年数は20〜29年がボリュームゾーン、リフォームの工事金額は1000万円以上が6割(60代前半・後半とも)。また、リフォームの動機や実際の工事内容は、水回りの交換が約9割で、段差解消や家事動線の確保、引き戸や手すりの設置などバリアフリー関連も多いという。
続いて、同社が出かけたシニア世代のリフォーム事例が説明された。その一部を紹介する。
1.96平米の広いマンションに60代の夫婦2人暮らし。20年はこの家で暮らすことを考え、妻の膝が悪いこともあり、将来車椅子を使うことを想定し、細切れの間取りを取り払い、動きやすい間取りへ変更。玄関などのバリアフリー工事も行った。
2.70代のひとり暮らしの女性。娘のマンションの隣が売りに出され、独居の不安を解消するため、購入することに。キッチンなど水回りや間取りを変更。
3.在宅で父親を介護している世帯。父親の部屋がリビングと廊下で隔てられていて疎外感があるため、廊下を取り払ってリビングの延長線上にし、ベッドの移動がしやすいようにもした。
1は、高齢期の体の衰えを考慮した事例。2は、親子が関わった事例で、「同居」ではなく、「近居・隣居」がキーワード。3は、在宅介護のリフォーム事例。このように、シニア世代のリフォームといっても、さまざまなタイプがあることがわかる。
高額な費用が必要な大規模リフォーム。できれば避けたいと考える人もいるだろうが、築30年以上の住まいは、老朽化による修理だけではなく、1980年以降、住宅性能基準が変わったことで、耐震、バリアフリー、断熱(省エネ)の面でもリフォームが望ましいという。
気になるバリアフリーのリフォームでは、段差解消や手すりの設置のほか、動線を確保することも行動や移動が容易になり、転倒を防止する効果があるという説明があった。
高齢になっても、在宅でできるだけ自立して暮らすために。ハード面からのアプローチの必要性が理解できたセミナーだった。