少子高齢社会に向け、50歳以上の中高年層の生活実態を調査――東大

東京大学大学院人文社会系研究科の白波瀬佐和子教授らは、日本学術振興会より研究助成を受け、2010年「中高年者の生活実態に関する全国調査」(以降、中高年調査)を実施し、このほどその結果を取りまとめた。

「中高年調査」の主な目的は、50歳以上の中高年層に着目し、所得や資産、家族・親族および近隣などのネットワーク、社会的活動、親子間の支援の授受状況を明らかにすること。少子高齢社会に向けた新しい階層研究の新機軸を提示するという点で、大きな意味があるとともに、現役対引退世代間の再分配のみならず、引退層間の再分配について政策的観点から検討する上で重要な意味をもつとしている。

【調査の概要】
■実施時期:2010年8月3日〜8月30日

■調査方法:郵送配布・訪問回収

■調査対象者:日本に居住する50歳から84歳の男女9,800人。有効回答者数は6,442人で、報告は病院入院中や施設入所中などを除く6,238人

主な調査結果の内容は以下の通り。

■資産が少ないのは、男性は一人暮らし、女性は三世代・一人親世帯

資産(預貯金、株式、生命保険・損害保険、持家以外の不動産、田畑・山林、絵画・骨董品・貴金属、その他)の保有状況と、預貯金額と預貯金以外の金融資産額(有価証券や投資信託)について質問したところ、まったく資産を持たず、金融資産を有さない者は男性38.2%、女性53.4%だった。
特に一人暮らしの男性の過半数(57.8%)はいずれの資産も保有していない。女性では、一人親世帯(50.8%)と三世代世帯(51.8%)で資産をまったく持たない者の割合が比較的高い。
何らかの資産を持っている者のうち、男性の8 割、女性の4 分の3 が子どもへ資産を継承したい意欲を表明した。

■世話や資金のやりとりは、上世代→下世代

過去1年間に、18歳以上の子どもとの間で行った定期的、日常的な経済的な支援について質問した結果、85%以上の大多数がやり取りはないと回答していた。本人の親、あるいは配偶者の親についても、8割程度が定期的な経済的支援を行っていない。

これまで対象者の親との間で資金や世話のやり取りがあったのかについても検討した。本人親/配偶者親からの受けたものとして「結婚費用、子どもの世話、子どもの出産・入学祝い、子どもの教育資金、住宅資金、お中元やお歳暮などの季節の贈り物、その他」があり、本人親/配偶者親に与えたものとして、「お中元やお歳暮などの季節の贈り物、家の建て替え・改修費、入院費用、老人ホームなどへの入所資金、一緒に旅行に行く、その他」について質問した。

それぞれの項目について「あり」とした事項を合計し、親子間のやり取りの程度をみたところ、「親から子へ」と「子から親へ」のやり取りは非対称であった。対象者本人の親からの譲渡が最も多く、配偶者親への譲渡は限定的で、世話や資金の親子間の移転は、上世代から下世代への方向に強くみられた。

■50代は、政府や社会保障制度への信頼が低い

人々の信頼度では、政府に対する信頼度の低さが目立った。「政府を信頼しない」と答えた者は6割以上にも上る。少子高齢社会における公的年金制度については、信頼しないとした者が4割、生活保護制度についても42.3%が信頼しないと答えた。年齢階層別に詳しく信頼の程度をみてみると、50代層において、特に政府(70%)、公的年金制度(54.4%)と生活保護制度(50.1%)への高い不信感が目立った。その一方で、家族に対しては、ほぼ全員が「信頼する」とした。

■年齢が高くなるにつれて、リスク対応力は低くなる

年齢階層ごとに頼ることのできる人の程度を、「人的資源保有スコア」として試算し、スコアが高いほど頼ることのできる人が多く、もしもの時のリスク対応力が高いとみなした。年齢が高くなるにつれて、人的資源保有スコアは低くなり、家族、親族、友人・知人についても同様に年齢が高くなるにつれてスコアが低下した。

また、「何かあった時に頼りにすることのできる人はだれですか」という問いに対し、「近所の人」と回答した人は極めて少数だった。東日本大震災後、絆の大切さが強調されているが、実際のデータでは、近所の人に頼むことができる者は決して多くなかった。少子高齢化・多様な家族形態が進む中、近隣コミュニティをどのように形成していくかは重要な検討課題であることが明らかになった。

◎東京大学

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