6月25日(月)、紀伊國屋サザンシアターにて開催された「発見者が語る――レビー小体型認知症を知っていますか?」。講演の後半では、小阪氏が主治医をつとめる患者と家族が3人紹介された。
1人目は、79歳の男性Aさん。2011年初め頃に幻視の症状が現われ、大学病院でレビー小体型認知症と診断されるが、治療法が適切ではなく、小阪氏の元で治療を受けることになった。服用している薬を見直し、症状が改善。受診当初は認知症評価スケールで19/30だったのが、2012年4月には30/30に。同窓会に参加するため、岩手県までひとりで行けるようにもなった。
マイクを渡されたAさんは、「この病気でいちばん苦しんだのは幻視です。部屋にいるはずのない人が見える恐怖は半端ではないものでした。ある日先生に『人の姿が見えたら体に触ってみなさい』と言われ、勇気を出して触ったら、何も感じない。それからは、人が見えても『これはからくりだ』と思えるようになりました」。
Aさんの場合、治療にはアセチルコリン系の薬を使用し、効果が見られた。アリセプトなどアセチルコリン系薬剤は、アルツハイマー認知症の治療に使われるが、幻覚を伴う症状に効くことも認められている。アリセプトが効かない場合は、抑肝散という漢方薬を使用することも多い。
2人目のBさんは、63歳。2008年にパーキンソン病の症状で精神科や神経内科を受診、2010年から小阪氏の治療を受けるようになる。Bさんとともに来場していた奥さんが、日々のケアの工夫を語った。
ベッドのシーツがヘビに見える、皿のパンくずが無数の虫に見える、という幻視への対処法として、「主人の『ヘビが!』という叫び声とヘビをたたく音がしたら、シーツのシワを伸ばして、『ヘビはいない、もう大丈夫』ということを見せてあげて、安心させます」。
大切なのは、幻視による恐怖を取り除いて安心させること。Bさん宅では、「おまじない」も発明。「すっきり、さわやか、元に戻った」と言い、最後にポンと手を叩き、消えたことを一緒に確認するという方法だ。
Bさんの奥さんは家族会のメンバーとして活動し、このほど若年のレビー小体型認知症を支える家族会を新たにスタートさせてもいる。
3人目のCさんは80歳の女性。1996年頃からうつの症状でメンタルクリニックを受診。2008年から軽度の認知症ということで、小阪氏の治療を受けるようになる。2009年に幻視や幻聴、被害妄想などの症状が見られ、認知症の症状も進み、要介護5と認定された。
会場にはCさんの息子が来場し、レビー小体型認知症の診断を受けてから若い頃に親しんでいた社交ダンスのレッスンに通い、笑顔を取り戻したCさんの様子を語った。「音楽に身をゆだねるくらいの動きですが、ダンスの先生が理解を示してくれていることが大きい」。
周囲の理解と思いやりの大切さ。Cさんの息子さんは、このほど認知症の啓発と支援を行うNPO「ハートリング運動」(NPO法人の認定を申請中)をスタートさせている。
講演会の最後には、事前に募った質問について小阪氏が答える時間が設けられた。「治療してくれる医師をどうやって見つけたらいいか」「精神科と神経内科のどちらにかかったらいいのか」など多くの質問からもこの病気への関心の高さが伝わってきた。
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