東京都は6月26日、東京都消費生活条例に基づき、知事から消費者被害救済委員会に新規案件4件(申立人10人)を付託したと発表した。
消費者被害救済委員会は今年度から迅速な解決を図るため、新たな部会を設置するなど同委員会の機能を強化したことに伴い、今回、区市町村からの案件を含め、複数の案件を同時に付託した。
今回付託された4件の中に、介護サービスに係る案件が含まれているので、紹介する。
■上乗せ介護サービス契約に係る紛争
申立人は70歳代の女性で、契約金額は100万円
【紛争の概要】
申立人(70 歳代女性)は、知人女性から「将来介護認定を受けた場合、介護認定期間中、公的介護保険とは別に追加で介護サービスを受けられる。」として、相手方団体への入会を勧められた。また「会員を入会させると報酬が得られるので、勧誘員にならないか。」とも誘われた。
平成22 年9月、知人女性に誘われ温泉旅行に参加した。そこで相手方の説明会があり、「入会すれば将来安心」「全国どこでも介護を受けられる」などと説明され、入会しようと思った。翌月、事業所へ出向いて入会を申し込み、帰宅後100 万円を振り込んだ。
平成23 年5月、友人に「この契約は在宅介護だけで、入院したら使えない。」と言われ、当該契約に疑問を持つようになった。翌6月に退会を申し出たが、「退会しても返金されない。」と説得された。
平成23 年9月、自宅近隣に提携の介護事業者がどの程度あるか問い合わせたところ、「提携する事業者はない。」「介護認定を受けた時点で、近隣の介護事業者に打診する。」などと回答された。また、介護を受けるときの手続などの仕組みについても質問したが、具体的な説明はなかった。
このため申立人は、介護認定を受けた場合、希望するような介護事業者がすぐ見つかるのか、また、本当に介護サービスを受けられるのか不安に思ったことなどから、改めて退会及び返金を求めたが、相手方は「入会金の返金はしない。」との規約を理由に応じず紛争となった。
今回の事例の問題点として、同委員会は以下の2点を挙げている。
1)規約では、サービス提供の有無にかかわらず、65 歳以上の会員が退会する場合、入会金は返金しないとされている。また、契約時に「全国どこでも介護を受けられる。」と説明をしているが、実際は介護認定を受けた時点で事業者を探すという仕組みであった。このような規約や勧誘方法は、消費者契約法上の問題があるのではないか。
2)介護サービスが提供されていないにもかかわらず「入会金の返金はしない。」との規約により返金がされないことは、消費者に一方的かつ不利益な規定であると考えられる。他にも同様の相談が寄せられていることから付託した。
この申し立て内容を見ると、申立人は介護サービスについてよく理解しないまま契約していると思われるが、そもそも温泉旅行自体が「勧誘」であり、「会員を入会させると報酬が得られる」という誘いは、マルチ商法とそっくり。また、「全国どこでも介護を受けられる」といっても、入会者の近隣の事業所すら調べていない状況では、信用に値しない。
なにより「入会金」とは記載していないが、なぜ「上乗せ介護サービス」に100万円もの大金が必要なのかも理解に苦しむ。その説明会の内容と、団体名の公表を待ちたい。
■問い合わせ: 東京都消費生活総合センター活動推進課
電話 03-3235-4155