「高専賃返還金トラブル」解決――礼金・介護一時金の初期償却に一定の目安示す

東京都消費者被害救済委員会は、平成23年11月9日に付託された「高齢者向け賃貸住宅の退去に伴う返還金に係る紛争」について、5月10日、その審議の経過とともに、解決した旨を東京都知事を報告した。結果、礼金、介護一時金 計600万円のうち約490万円を事業者が返申立人に返還することとなった。

【紛争の概要】
申立人の主張による紛争案件の概要は、以下のとおり。
申立人(一人暮らしの70歳代女性)は、介護サービスを受けられる施設として、相手方甲が運営する高齢者専用賃貸住宅を知り、平成22年7月、この住宅に入居した。
申立人は、相手方甲と賃貸借契約を結ぶほか、相手方甲の提携するサービス事業者(相手方乙)と介護サービス契約を結び、相手方乙から介護サービスを受けることとなった。申立人は、賃貸借契約に基づき礼金200万円、家賃7万円、共益費3万5千円を、介護サービス契約に基づき介護一時金(※2)400万円を、それぞれ支払った。

入居後、体調が回復した申立人は、一人暮らしも可能と判断して平成22年12月に退去した。退去にあたり、礼金200万円は返金されず、介護一時金は400万円のうち208万円が返金された。

申立人は、200万円の礼金は高額で一切返金されないことに納得できず、また介護一時金についても、短期間で約半分が償却され返金額に納得できないと主張したが、相手方甲及び相手方乙が契約条項を理由にこれに応じなかったため紛争となった。

【解決内容】
高齢者専用賃貸住宅運営事業者(相手方甲)に対して:
賃貸借契約における礼金額として相当性が認められるのは賃料の3ヵ月分が限度であるとして、200万円のうち179万円を返還する内容であっせんし、合意した。

介護サービス事業者(相手方乙)に対して:
介護一時金の償却条項は入居期間の長さに応じた償却となっておらず、合理性が認められないとして、400万円のうち310万8千円を返還する内容であっせんし、合意した。

【主な審議内容】
1 賃貸借契約における礼金について
礼金自体が一切否定されるべきものではないが、不相当に高額であって消費者の利益を一方的に害するときは、相当性を逸脱する範囲において、消費者契約法第10条により無効になると解される。本件礼金額は賃料の約28ヵ月分と著しく高額で、礼金額の相場や、原状回復費用が事業者負担であること等を勘案しても、相当性が認められるのは賃料の3ヵ月分が限度である。

2 介護サービス契約における介護一時金について
(1) 介護一時金の償却条項について
介護一時金は、合理性の認められる限度での初期償却は許容されるが、それ以外は、入居期間の割合に応じて償却されるべきであり、それを超えた償却の定めは、消費者契約法第10条により無効と考えられる。本件償却条項は、入居期間の長さに応じた償却となっておらず、早期に退去する入居者に著しい不利益をもたらすもので、合理性は認められない。
(2) 返還額について
本件事情の下では、初期償却として合理性が認められるのは20%が限度である。介護一時金400万円から初期償却費(20%)を控除し、そこから、想定される入居期間(申立人の平均余命)に対する実際の入居期間の割合に応じた償却金額を差し引き、残額である310万8千円を返還すべきである。(但し、事業者は既に208万円を返還しているので、差額の102万8千円を返還することとなる。)

【同種・類似紛争の再発防止のために】
■事業者に対して:
本件では高額な礼金が問題となったが、事業者はその内容や趣旨を申立人に十分に説明しておらず、申立人が納得できなかったことが紛争の1つの要因となっていた。消費者トラブルの多くの事例でこのような説明不足が紛争の要因となっており、事業者は、消費者に対して、契約前及び契約締結時に契約内容について十分な説明をすべきである。

■消費者に向けて:
消費者は、高齢者向け住宅や有料老人ホームに入居する際、一時金の趣旨やその算定の基礎、さらには契約解除時における返還条件等について、事業者に対して、十分な説明や情報提供を求めることが望ましい。そして、他施設との比較検討を行うなど、事前に契約内容を十分に吟味し、納得をしたうえで、契約を締結するよう心がけるべきである。

RASE/2012/05/DATA/20m5a100.pdf" target="_blank">高齢者向け賃貸住宅の退去に伴う返還金に係る紛争案件 報告書

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