5月12日、東京・信濃町で認定ケアマネジャーの会が主催する5回連続のケアマネジメントキャリアアップ研修「めざそうスーパーバイザー」の1回目「ケアマネジメントとは何か」が開催された。北は北海道、南は九州から約100名の意欲的な介護支援専門員が集まり、会場は前向きなエネルギーであふれた。ここでは研修の冒頭に行われた、認定ケアマネジャーの会会長の白木裕子氏によるプレゼンテーションを紹介する。ケアマネジャーのスーパービジョンの現状についての調査研究の報告である。
白木氏がプレゼンテーションで訴えたのは、スーパービジョン(以下、SV)こそがケアマネジャー育成の促進要因であるのに、スーパーバイザー(スーパービジョンを行う者。以下、SVor)が十分に養成されていないこと、そしてスーパービジョンの定義がバラバラでSVorとスーパーバイジー(スーパービジョンを受ける者。以下、SVee)の間にSVの認識のミスマッチが生じていることだ。
主任介護支援専門員の研修は本来SVorの養成機能を持っているはずなのに、都道府県によって内容にばらつきがあり、十分機能していないと白木氏はいう。今回の研修も、そうした現状を踏まえ、SVorとなれる人材を広く養成しようという目的で開催したとのこと。
SVにはSVeeの業務の管理・監督を行う管理的機能、援助者としての成長を促す教育的機能、SVorがSVeeを心理的に支える支持的機能がある。しかしSVの定義は既存の資料ではバラバラであり、各都道府県の主任介護支援専門員(以下、主任ケアマネ)研修の資料によれば、「熟達者が未熟達者に教える」という定義が一般的であったという。そこで、白木氏らは現職のケアマネジャーがSVの教育、管理、支持の3機能についてその重要性をどの程度認識しているか、16項目の質問によって調査した。
調査は、地域包括支援センター(以下、包括)の主任ケアマネ、居宅介護支援事業所の主任ケアマネ、特定事業所の主任ケアマネ、主任ケアマネではない居宅介護支援事業所の介護支援専門員の4タイプが対象。
調査の結果、主任ケアマネと、主任ケアマネ研修を受講していない一般の介護支援専門員の間に、SVに対する認識のギャップがあることが明らかになったという。本来、SVとは、情報の整理、役割範囲の明確化、気づきの促し等を行う場であり、直接的な問題解決策を提示する場ではない。そのことを主任ケアマネは承知しているが、一般の介護支援専門員はSVを解答を与えてくれる場だと考えているというのである。
白木氏は、これが人材育成における大きな問題点となっていると指摘。これでは、一般のケアマネジャーから、「包括に支援を求めても何の解決策も提示してくれない」という不満が出るのも当然だ、資格取得後の実務研修でSVのなんたるかを教えるべき、と述べた。
また、調査結果から、特定事業所のケアマネジャーは所内と包括の両方からSVを受けているが、主任ケアマネのいない事業所ではSVを受ける機会が少なく、特定事業所等に勤務するケアマネジャーと格差が生じる可能性があることを示した。
さらに、SV技術の習得状況についての調査からは、主任ケアマネ研修だけでは習得は困難であると指摘。特に包括の主任ケアマネは、SVを展開する自信が「ある」との回答が11%弱に留まり、特定事業所等の主任ケアマネに比べて自信のなさが眼に付いたことも明らかにした。
白木氏は最後に、熟達ケアマネジャー6名へのグループインタビューにより見出したケアマネジャーとしての成長プロセスから、SVorになるには事例検討会を運営する力、つまり、提出された事例を深め展開する力が必要であると訴えた。
こうしたことを踏まえ、このあとの研修では、事例検討会で事例を深め、展開していく上で自分に不足している視点が何かに気づくためのグループワークが行われた。グループワークの様子については報告(2)で。
■関連記事
・ケアマネジメント技術の有効性が発揮されていない――ケアマネのあり方検討会(3)
・ケアマネジメントの質の問題はケアマネジャーだけの責任ではない――ケアマネのあり方検討会(2)