ケアマネジメントの成果の検証、蓄積、発信を――ケアマネジメント研究会報告会(3)

3月21日、桜美林大学大学院教授・白澤政和氏によるケアマネジメント研究会主催の「ケアマネジメントの評価としてのQOLを考える」が、東京・四谷の桜美林大学四谷キャンパスで開催された。その報告の最終回である今回は、「利用者・ケアマネジャーからみた1年間でのQOLの変化」をテーマとした、前橋市地域包括支援センター西部・山田圭子氏による事例報告の後半を紹介する。

山田氏の事例報告を少しおさらいすると、事例として紹介した利用者は、家族と同居する要介護度4の「動ける」認知症の80歳男性。言葉による意思疎通が困難で、次第に徘徊や放尿、暴力などのBPSDの出現が頻回になり、家族からSOSが出されていた。これを受けて、ケアマネジャーショートステイ、利用中のデイサービスが集まって支援内容の検討を行い、ショートステイでのチャレンジによってBPSDが2か月で軽減したのである。

ケアスタッフの意識が変わり、いい流れに
ショートステイではまず、ところかまわぬ放尿を一切止めず、行動パターンからトイレ誘導のタイミングを見出した。これにより、8割の放尿が回避可能に。また、言語での意思疎通が困難であることから、身振り、表情での指示を繰り返す中、偶然、筆談が可能であることを発見。意思疎通が可能になったことで、利用者のイライラが減っていった。

暴力的な行動については、帰宅願望が強まると出現することに気づき、スタッフが利用者の身体に触れ、抱きかかえるなど、帰りたいという気持ちを共有する対応を心がけた。これにより、暴力的行動も軽減した。

山田氏は、こうしたチャレンジによりショートステイのスタッフに、認知症高齢者の行動の背後にある原因を考える→その原因を理解し適切に対応する→適切なケアで利用者が変わる姿を目の当たりにする→自分自身のケアに自信を持つ→他の利用者にも応用して適切なケアを提供する、といういい流れができたという。

ケアプランとサービスによる利用者の変化の検証を
山田氏はケアマネジャーが、認知症高齢者の生活を見てケアプランを立て、どのような方向でサービスを提供してほしいかを事業所に伝えることの大切さを指摘。それが事業所による的を射たケアの提供につながり、利用者本人のQOLがアップするだけでなく、本人が落ち着くことで介護する家族のQOLもアップすることを訴えた。

また、提供されたサービスとその効果を検証し、よい変化が起きたら、何が役に立ち、何が変える原因となったかを把握するという検討を積み重ねていくも必要。こうした検討の蓄積によって、認知症高齢者への効果的な対応の共通性が見出せる可能性があると、山田氏は指摘した。

岡田氏、吉江氏、山田氏の発表をまとめる形で、認定ケアマネジャーの会会長の白木裕子氏が、「日々のケアマネジメントがこのような形で報告されたことには意味がある。こうした研究を積み重ねていくことで認知症ケアマネジメントのガイドラインができていくことなどを期待したい」と発言。

そして最後に、白澤氏が「介護は生活であり、生活には身体的側面、心理的側面、社会的側面がある。身体機能は加齢により低下するが、本人の意欲、家族の介護負担、家族関係などの心理・社会的側面は維持や改善が可能である。それにケアマネジメントがどう対応しているかでもって評価すべきであり、実践と研究をフィードバックしながら、このような視点を訴えていくことが大切だ」と述べ、報告会を締めくくった。

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