慶應義塾大学医学部腎臓・内分泌・代謝内科の研究グループは、東京医科歯科大学、東京大学、大阪医科大学らの研究グループと共同でビタミンE の骨代謝における役割を解明し、ビタミンE を過剰に摂取すると骨粗鬆症を発症する危険があることを世界で初めて明らかにした。
骨粗鬆症骨は骨の強度の低下によって骨折のリスクが高くなる疾患。75 歳以上の女性の2人に1人は骨粗鬆症であると言われており、高齢化にともない、日本における骨粗鬆症の患者数は1,300 万人に達すると考えられている。また、骨粗鬆症によって発生する骨折は寝たきりの原因の第2 位。
抗酸化作用を有するビタミンE は、アンチエイジング効果があると考えられ、サプリメントとして人気が高い。同研究グループは、研究の結果を踏まえ、ビタミンE の過剰摂取を防ぎ、上手に摂取することが骨粗鬆症の予防に重要と指摘している。
【研究の概要】
骨では、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞が常に働き、新陳代謝を行なう。骨芽細胞と破骨細胞の新陳代謝(骨代謝)のバランスが崩れると、骨粗鬆症が発生する。骨を壊す破骨細胞は成長するとともに細胞同士が融合し、巨大化することが特徴だが、その機序については不明な点が多かった。
研究では、ビタミンE 欠乏モデルマウスの骨の解析を行ったところ、破骨細胞の大きさが小さく、うまく骨を壊すこと(骨の吸収)ができていなかったため、全身の骨の量が増加していたことが判明。続いて、破骨細胞を培養してビタミンE を添加すると、破骨細胞が巨大化し、骨を吸収する能力が亢進した。これにより、ビタミンE が破骨細胞の巨大化に必要なたんぱく質の産生を誘導することを証明した。
さらに、正常マウスと正常ラットに、ヒトがサプリメントとして服用しているビタミンE に相応するビタミンE を添加したエサを8 週間投与したところ、破骨細胞による骨の吸収が亢進して骨量が減少し、骨粗鬆症を発症した。
以上の結果により、ビタミンE は破骨細胞を巨大化することで骨の吸収を促進すること、ビタミンEの摂取量が多いと骨粗鬆症を引き起こす可能性があることが明らかになった。
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