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脳梗塞の主な症状と診断方法――健康長寿いきいき講座（1）

東京都長寿健康医療センターは、2月16日、東京・王子の北とぴあさくらホールにて、第3回健康長寿いきいき講座「知っておきたい脳の病気　生活の質を守るために」を開催し、同センター医師による脳梗塞と認知症がテーマの講演が行われた。

同日は、厳しい冷え込みにも関わらず、高齢世代を中心に多くの聴衆が来場し、定員1300人の会場はほぼ満席。親の介護をしている世代の姿も見られ、高齢者の脳の病気への関心の高さがうかがえた。

講座の前半では、同センター神経内科副部長の小宮正氏が「治せる脳梗塞への取り組み」というタイトルで、脳梗塞の疾患の特徴や最新の治療法について解説した。

■脳卒中の6割を占め、マヒや言語障害などの後遺症が

脳の血管が詰まることが原因で起こる脳梗塞は、脳卒中の約6割を占める。かつて日本人の死因のトップだった脳卒中は、近年では第3位に。しかし、脳梗塞の後遺症が原因で肺炎を引き起こして死亡に至るなど、大もとには脳梗塞があると考えられるケースは多い。マヒや言語障害などの後遺症もあり、脳梗塞は依然として高齢者にとって深刻な疾患だ。

脳梗塞は血管の詰まり方などによって分類され、動脈硬化が原因で起きるアテローム血栓性梗塞、心室細動など心臓病が原因で起きる心原性脳塞栓症、細い動脈が詰まるラクナ梗塞の3つが大半を占める。75歳以上の高齢者では、心原性脳塞栓症が多く発症することがわかっている。

■脳梗塞の主な症状と診断方法

昨日まで元気だったのに、突然発症する脳梗塞。主な症状は、体の片側の筋力低下や感覚障害、言葉がうまく通じなくなるなどで、前兆はあることもないこともある。脳梗塞が疑われる場合、?線を使う頭部CTや磁気を使うMRI検査を行う。CTは結果が出るまで時間がかかるので、急を要する場合はMRIがふさわしいと考えられるが、どちらを用いるかは医師が判断することになる。

■血栓を溶かす治療法で症状を改善。使用には条件が

脳梗塞の最新の治療法が、薬剤を点滴して詰まった血管を再開通させるtPA静注療法（自栓溶解療法）だ。脳は、血流の再開が早ければ早いほど症状が回復し、後遺症が軽くなる可能性も高い。

tPAの有効性・安全性は、1995年にアメリカで偽薬を対象とした臨床試験で証明されている。脳梗塞から3か月後の後遺症を調べたところ、軽微な患者の割合は、偽薬治療では26％なのに対し、tPA治療では39%と明らかに有意だった。ただし、tPA治療では、脳出血が5〜6％に発生する。日本でも治験を行ったところほぼ近い数値が確認された。日本では2005年にｔPAが認可され、治療が可能になった。

tPAを使用するには条件がある。まず、発症後3時間以内に投与できること。検査時間を考えると発症後1時間以内の来院が望ましい。血栓を溶かす強力な薬で脳出血の可能性もあるため、これまでの病歴や手術歴がわかっていること、本人の意識がもうろうとしている場合は家族の了解が必要だ。問診では、発症した時間といつまで元気だったかを伝える必要もある。

tPAを行なうためには、CTやMRI検査が24時間できるなど医療機関の設備や医師の技量などの施設基準がある。東京都では、約3年前からtPAを実施している医療機関を調査し、その情報を消防庁とオンラインでつなぎ、救急隊に届く仕組みになっている。

当センターでは、2006年以降tPAを42例実施している。平均76歳で、発症して来院するまでは約1時間だった。すでに出血があった症例、血栓が大きすぎる症例では、治療が不可能だった。

■脳梗塞を予防するために

高血圧や不整脈に注意する。血圧は、病院や施設で測定すると条件が変わりやすいので、心身ともに落ち着いて測定できる自宅で図るのが望ましい。血糖値やコレステロールをコントロールし、生活習慣病にも注意したい。また、血液が濃くなりやすい高齢者は、水分摂取をこまめに行うことが大切。冬場は水分をとらない人が多いので、意識的に水分を摂取してほしい。

◎東京都健康長寿医療センター

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