日本医科大学、川崎市および老人病研究会は、2月11日、文部科学省社会連携研究推進事業5年間の総まとめとして、認知症市民公開講座「都市部での認知症の治療とケア〜脱無縁社会へ・川崎での取り組み〜」を開催した。
同講座は2部構成で、1部では、全国でも珍しい認知症相談センターの5年間の取り組みをはじめ、かかりつけ医、行政、研究者の立場などから発表が行われ、2部では、医師、外国人、市民(認知症家族)、権利擁護支援の専門家によるパネルディスカッションが行われた。850名定員の会場には多くの市民が訪れ、3時間に渡る講座に熱心に耳を傾けていた。
1部の講演では、日本医科大学理事長、川崎市長の挨拶の後、以下のような報告が行われた。
【街ぐるみ認知症相談センター5年間の成果】
演者 北村伸(社会連携研究推進事業研究代表、日本医科大学武蔵小杉病院内科教授)
2007年12月、文部科学省社会連携推進事業「認知症街ぐるみ支援ネットワーク」の拠点として開設。認知症を心配して訪れる市民に対して、無料でタッチパネル式の検診などを行い、疑いのある人の情報をかかりつけ医に紹介。2011年12月までに利用した延べ2,700人以上のうち、約29%にもの忘れの疑いがあった。さらに、該当しなかった人には6ヶ月ごとに経過観察を行った。
相談事業以外にも、老人会などとの会議や、介護と医療の連携促進のためのカンファレンスへの出席、認知症の早期発見のための共同研究など、認知症を支援する街ぐるみのネットワークが円滑に運ぶよう貢献してきた。2012年4月からは日本医科大学武蔵小杉病院認知症センターの相談部門として継続し、引き続き無料で相談が受けられる。
【社会連携事業の基礎研究の成果〜突き止めた水素の有効性】
演者 太田成男(日本医科大学老人病研究所生化学部門教授)
認知症は治療よりも予防に力を入れるべき病気。認知症の原因の一つは、年齢とともに増えていく酸化ストレス(活性酸素による影響)。この酸化ストレスを減らすのに水素が有効であることを当研究所で突き止めた。しかも、マウス実験では記憶力の低下が抑制されることもわかってきた。
現在は、軽度認知症の患者に対して症状の悪化の抑制を調べている。これにより、認知症の予防法が初めて開発されるかもしれない。と同時に、水素の効果が発揮するメカニズムも解明したい。
参考著書『体が若くなる技術』(サンマーク出版)
――市民講座レポ(2)へ続く