内閣府は、1月12日、高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会を行い、会議の中で、「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書(素案)」を発表した。
同報告書は、団塊の世代が65歳に達するに当たり、従来の高齢者の実態とは合わなくなってきていることを指摘する。
そもそも高齢者を65歳と定義したのは1950年代、国連によって。1955年当時、日本の平均寿命は男性63.3歳、女性67.7歳で、その後60年間に20歳も差が出てきてしまった。65歳以上を一律に支える必要があるとする従来の「高齢者」に対する固定概念が、多様な存在である高齢者の意欲や能力を活かす阻害要因になっている。
このことから、今後は、高齢者の意欲を活かし、さらに社会の各方面で活躍の場を広げていくために、実態に即して、国民の意識を改革していくことが課題だとする。そして、現在の高齢化や高齢者を取り巻く環境の課題に対応して、今後の超高齢社会に向けた基本的な考え方について検討を行う必要を説いている。
以下、介護に関係するものをいくつか挙げてみよう。
現状分析としては、わが国の高齢化率は2005年に20.2%と世界最高水準に達していて、尚且つ、他に例を見ないほど急速に伸びている。今後も一層の高齢化が進んで2055年には40.5%に達すると見込まれ、世界のどの国も経験したことのない高齢化社会を迎えることになる。このため、2020年には20〜64歳の1.9人、2050年には1.2人で、1人の高齢者を支えることが想定されている。
高齢者人口の増加に伴い、要介護認定者、認知症の高齢者は急激に増加。要介護認定率は2009年に16.2%だったものの、2055年には25.3%と1.5倍の増加が見込まれる。介護の担い手としては、同居家族が中心であるが、2010年には60歳以上の同居介護者の割合は62.1%となっている。要介護度が重いほど、家族介護者の介護時間が長くなり、肉体的、精神的負担を心配する人も増え、介護を理由に転職・離職する人の割合も増える傾向にある。
介護サービスを巡っては、介護従業者の離職率を下げるように処遇改善のための法律が成立したり、要介護度が重くなっても地域で自立して生活できるように、地域包括ケアシステムの実現を図る法律が成立した。
今後のあり方としては、老老介護など介護家族が介護うつ状態にならないようにするために必要な支援を行うこと、孤立しがちな高齢者や介護家族など、支援を必要とする人々に対して、巡回しながらニーズを把握する仕組み、個別の相談支援を行うことなどが重要である。また、緊急時の高齢者の安否確認システムも含めて、総合的なネットワークが構築され、高齢者の日常生活全般に地域の目が行き届いている地域を実現していくことが望まれる。
また、日常生活圏内において、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく、一体的に提供される「地域包括ケアシステム」を確立することが急務である。その際には、そこに行けば必要なケアの情報が得られるというワンストップの仕組みを構築することが重要であり、地域包括支援センターの総合相談、包括的・継続的ケアマネジメント、虐待防止、権利擁護等の機能が最大限に発揮できるような機能的強化が求められる。
高齢者が快適に生きるためのシルバー市場に関しては、例えば、介護をする人の高齢化や老老介護の増加を考えて支える人の負担を軽減することも重要であるが、高齢者の体力の低下に関しても、介護ロボットなど新しいメカトロニックスによる支援が必要になると考えられる。
◎内閣府 高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会(第3回
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