アルバイト採用・育成に役立つ求人情報サイト「anレポート」を運営する株式会社インテリジェンスは、anレポート内の「史上最前線レポート」で『介護職員が辞めない4つの秘訣 −人件費7割の老人ホームに見る定着の手立て−』を発表した。
同レポートでは、パートの雇用環境の改善に取り組んでいる事業体として、東京都より「非正規労働者雇用環境整備支援事業モデル企業」の指定を受けている社会福祉法人白百合会が運営する「特別養護老人ホーム 増戸ホーム」を紹介。
一般に、介護職員の離職率は2010年度で19.1%で、およそ5人に1人の割合で辞めている状況。さらに、離職者のうち1年未満で辞めた人は43.5%に上るが、増戸ホームの介護職員は平均勤続年数が約7年、勤続10〜20年のベテランも複数いるほど、非常に定着率が良いという。高い定着率の理由を施設長の渡邊哲伸さんに聞いた。
まず一つは、正規・非正規の職員相互転換制度によるところが大きいという。この制度は、本人の希望や資格・能力などによって、パートから正職員へ転換できるだけでなく、ライフステージに合わせて正職員からパートへも相互転換を可能にした制度である。
「パートから正職員への転換条件は、(1)介護福祉士の資格を取得していること、(2)夜間勤務ができること、(3)介護主任者の推薦があることの3つです。これさえクリアすれば、誰でも正職員になれます。反対に、子育てや健康上の理由などから夜勤が難しくなり、一時的に正職員からパートに転換する人もいます」
この制度は、資格を持たないパートの資格取得に対するモチベーションアップにもつながっているという。「働きながら資格を取ろうとしても、日々の忙しさに追われて、なかなか勉強時間がとれないのが現状です。それでも正職員になるという目標があるから、頑張れるようですね」。実際、これまでにパートから正職員になった人は4名おり、現在もパート10名のうち、3名が介護福祉士の資格取得に向けて勉強中だ。
給与面では、正職員とパート間に区別を設けないようにしている。例えば、パートの時給は870円からと決まっており、2年ごとに30円昇給する。昇給には査定はなく年功制で、これは正職員も同様。また、夜勤手当や職務手当、通勤費手当なども、パート・正職員に関係なく支給するほか、健康診断の実施や福利厚生施設の利用も、パートに対して保証している。さらに、賞与も正職員同様、パートにも一律3.8カ月分を支給、退職金も正職員と同じ基準になっているという徹底ぶり。
このように賃金・福利厚生面において、正職員とパートの格差をできる限り小さくしていることが、スタッフ間の対等な関係構築を促進しているという。
「多くの介護施設で課題になりがちなのが、パートと正職員とで給与や仕事内容に差があるために、パートの方が『これ以上はやらない』とか、反対にパートの方が自主的に頑張ろうとしても、『そこまでしなくていい』と否定されてしまうようなケースです。それでは、お互いにやる気が下がってしまう。うちの施設では、誰が正職員でパートかとか、介護職か看護職かなどを区別しない雰囲気があり、正職員とパートの間に壁や上下関係がありません。ですので、正職員もパートも対等な立場で、より良いサービスのために意見を言い合っています」
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