11月24日、特別非営利活動法人楽の主催、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の後援で、介護・医療職のための教育セミナー「ご存知ですか?改善する歩行障害・認知症・尿失禁 特発性正常圧水頭症」が開催された。
会の冒頭、あいさつに立った楽の柴田範子理事長は、「治療につなげることで治る方がいるというのは、誰もが抱く望み。介護職やケアマネが(利用者の)行動を見て気づくことで、医療につなげられるかもしれない」と、利用者と接する機会の多い介護職、ケアマネへの期待を語った。
講演を行ったのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社コッドマン事業部の佐々木博信氏。
佐々木氏がまず参加者に伝えたのは、「認知症は病名ではなく、症状です」という言葉だった。
そして、認知症という症状を起こす原因疾患の一つに、「正常圧水頭症」があり、「適切な診断・治療を行うことで治る、あるいは改善します」と説明した。
水頭症とは、頭のなかに「髄液」という液体が過剰に溜まる病気。そのため、脳室が大きくなって、脳を圧迫することで、さまざまな症状を起こす。
正常圧水頭症には、「続発性正常圧水頭症」と「特発性正常圧水頭症」の2種類があり、前者は「何らかの病気の後に生じるもの」、後者は原因が明らかでないもの。続発性正常圧水頭症は、くも膜下出血の後に多く、「30%の割合で起こる」とのこと。一方、原因が明らかでないために、見過ごされやすいのが、特発性正常圧水頭症だ。
佐々木氏は、正常圧水頭症を疑うポイントとして、次のような症状を紹介した。
○歩行障害
・小またでよちよち歩く、小刻み歩行
・足が少し外側に開き気味になる、開脚歩行
・足が上がらない、すり足歩行
・不安定で転倒することがある→特にUターン時には、片足を軸足にして、小刻みにまわる
・第一歩が出ない
○認知症
・もの忘れ
・一日中、ぼーっとしている、日課・趣味をしなくなった
・呼びかけても反応が遅い
・表情が乏しくなった
・摂食障害
○尿失禁
・頻尿(トイレが近い)
・尿意切迫(がまんができない)
・尿失禁(歩行障害があるため、間に合わないことも)
これらは「三徴候」と呼ばれ、歩行障害は94〜100%、認知症は69〜98%、尿失禁は70%以上の割合で生じるという。
「特発性正常圧水頭症が注目されている理由は、歩行障害、認知症、尿失禁という症状が改善されることで、自立度が高まり、介護の負担が減る可能性があるということ」と佐々木氏。さらに、治療によって症状を改善することで、「国内で300億円規模の介護保険が抑制できるという研究もあります」。
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