11月18日に開催されたセミナー「この病気を知っていますか? 『前頭側頭型認知症』と『レビー小体型認知症』」では、後半、レビー小体型認知症 家族を支える会顧問で、株式会社harunosora編集長の尾崎純郎氏も登壇し、レビー小体型認知症について、わかりやすく解説した。
レビー小体型認知症とは、三大認知症の一つで、アルツハイマー型認知症に次いで多く、認知症患者の2割を占めている。
最も顕著な特徴は、ネズミや虫が這い回っているのが見えたり、いないはずの誰かがベッドで寝ているように見えたりといった、いないもの・人が見える「幻視」。
このほかにも、パーキンソン症状や認知の変動、自律神経症状、抑うつ、レム睡眠行動障害(眠っている間に悪夢をみて、大きな寝言を言ったり、暴力を振るったりすること)といった症状があらわれるという。自立神経症状は、のぼせ、起立性低血圧、頭痛、耳鳴り、食欲不振、下痢・便秘、むくみ、手足の冷えなど全身に表れるため、尾崎氏は、「アルツハイマーは脳の病気だけれど、レビー小体型認知症は全身の病気」と説明した。
レビー小体型認知症の場合、さまざまな身体症状があらわれるため、薬の処方が難しい。
「あちらを立てれば、こちらが立たず…と、処方のジレンマがあります」(尾崎氏)と語るように、たとえば、認知症治療薬であるアリセプトを使って認知機能をアップさせようとすると、歩行障害が悪化したり、抗パーキンソン病薬を使って歩行能力をアップさせようとすると幻視が悪化したり…といった具合。
尾崎氏は講演の最後に、「レビー小体型認知症は約55万人いるといわれていますが、55万人という数値は診断がついていない人も入っています。レビー小体型認知症の場合、診断できる医師が少ない。さらに、薬のさじ加減が難しい」と、診断、治療の難しさを指摘した。
講演の途中で流れた、レビー小体型認知症の夫と介護する妻のドキュメンタリーのなかで印象的だったのは、「(幻視のある夫と)コミュニケーションのチャンネルが合わない」という、一緒に暮らす妻の言葉。また、この夫婦がある医師のもとを訪れ、初診に3時間かけてくれたという話が流れたときには、会場から「まぁ…」「なかなかいないね…」と感嘆の声が漏れていた。
◎レビー小体型認知症 家族を支える会
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