独立行政法人理化学研究所とアステラス製薬株式会社は、「アルツハイマー病の発症機構の解明と新規創薬標的の探索」を目的に、5年間の共同研究契約を締結した。
アルツハイマー病を含む認知症は、2020年には国内の患者数が325万人に達すると予測されている(厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」)。認知症の約半分を占めるアルツハイマー病は、患者を抱える家族にとっても社会的な負担が非常に大きい疾患であるため、その克服は医療先進国として早急に取り組むべき課題と認識されている。
しかし、現時点では、根本的な治療法や予防法は確立されていない。対症療法のみに依存している状況だ。抜本的な治療法の確立には、発症のメカニズムの全容解明と、それに基づいた本質的な新規治療法の創薬が不可欠である。
理研BSI神経蛋白制御研究チームは、脳内の病原性たんぱく質を分解するメカニズムの解明を通じて、神経変性疾患、脳の老化の診断・予防・治療のための基礎的な治験を得ることを目的に研究を行ってきた。2011年7月には、アルツハイマー病の原因物質として重要な「アミロイドβペプチド」に関する新たな知見をもたらしている。
今回の共同研究は、理研社会知創成事業創薬・医療技術基盤プログラムの協力のもと、理研BSIにおける基礎研究の成果、基盤となる技術と、アステラス製薬の創薬の研究基盤を戦略的にいかし、両機関がアルツハイマー病の発症メカニズムの解明と、そこから得られる新規創薬標的の探索、検証に向けたもの。
アルツハイマー病の治療・予防は、現時点では、根本的な方法は確立されていないが、理化学研究所の基礎研究力とアステラス製薬の創薬力が融合することで、今後、発症のメカニズムが解明されるとともに、治療・予防法が確立されることが期待される。
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