九都県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)では、11月1日、社会問題となっている高齢者の所在不明・孤立化問題への対策等について意見交換を行い、九都県市だけでは解決に至らない課題について、国への要望を実施した。
昨年夏、全国において、住民基本台帳に記載されている高齢者の所在が不明であるケースや、既に死亡しているケースが相次いで発生した。一方、急速な高齢化が進行する中で、都市部を中心に、地域におけるつながりの減少や家族関係の希薄化が進み、地域コミュニティにおける相互扶助機能の低下等により、高齢者の孤立化が進んでいる。
こうした状況の中で、国では、高齢者所在不明・孤立化防止対策チームが設置され、1)今後、高齢者の生存・死亡・所在地等を的確に把握するとともに、2)孤立化している高齢者等への行政や地域による支援策を充実していくことが必要であるとの課題認識が示された。
地方自治体においては、高齢者の所在確認、孤立化対策について、地域の実情に合わせ様々な工夫をこらしながら、施策を展開しているところであるが、高齢者の所在確認や孤立化防止策を展開するにあたっては、個人情報の取扱いや民生委員の業務軽減が課題となっている。
また、次期「高齢者保健福祉計画」及び「介護保険事業計画」の策定にあたり、国から示された地域包括ケアシステムを構築していくためには、地域包括支援センターの運営体制の充実を含めた財源の確保が必要である。
以上のような理由より、九都県市首脳会議では国、都県、市における役割を整理するなど研究結果を取りまとめ、内閣府、総務省、財務省、厚生労働省の首長宛に要望書を提出した。
要望内容は以下のとおり。
【高齢者の所在不明・孤立化対策に関する制度の整備・構築について】
個人情報の取扱いについては、各市町村の条例に委ねられているところであるが、高齢者の所在確認や孤立化防止における見守り活動に活用するための個人情報の取扱いについて、総合的なガイドラインを示すこと。
高齢者の所在確認や孤立化防止の施策を展開するにあたって、民生委員の協力が不可欠であることから、今後、さらに高齢化が進行することを考慮して、民生委員の活動費や活動対象世帯数などの基準に関する処遇改善とともに、民生委員活動に関する住民の理解が得られるような普及啓発など、民生委員の職務内容の整理を含め活動しやすい環境づくりに対する支援策の充実を図ること。
【高齢者の所在不明・孤立化対策に関わる財源の確保について】
地域の日常的な支え合い体制づくりを支援する「地域支え合い体制づくり事業」の助成が本年度で終了することとなっているが、この制度を継続するとともに、事業立ち上げ時の整備資金のみでなく、立ち上げから軌道に乗るまでの一定期間、事業を継続するための事業費も含めた弾力的運用ができるように見直すこと。また、その他、「市町村地域包括ケア推進事業」、「安心生活創造事業」など、高齢者の孤立化対策に関わる助成制度等も引き続き、実施すること。
地域包括支援センターの運営経費が地域支援事業の上限額では収まりきらず、一般財源を充当している自治体がある。今後、地域包括ケアシステムを構築していく中で、地域包括支援センターが担う役割が大きくなるものと考えられるため、地域支援事業における各事業の上限額については地域の実情に応じてより柔軟な対応が取れるような運用基準に見直すこと。また、介護予防・日常生活支援総合事業について、早急にその詳細を明らかにすること。
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