東京都は、10月31日に認知症対策推進会議認知症ケアパス部会(第2回)を開催した。前半の数井裕光・大阪大学大学院教授(医学系研究科)の報告に続き、後半は、1回の会議の内容を振り返りながら各委員に意見を募った。ケアパス部会は、学識経験者2名、医療関係者5名、介護・福祉関係者3名、行政関係者3名、家族関係者1名で構成されている。
第1回の会議では、「認知症の人の支援に向けた医療と介護の連携や情報共有化の現状と課題」をテーマに、連携や情報の共有が必要になる3つの場面を想定し、議論が交わされた。3つの場面とは、?認知症の疑いから受診まで?認知症の患者の日常診療・介護サービスの利用?身体合併症・周辺症状が出た場合の入退院時。この日は、おもに?での受診のつなげ方における問題点について意見が述べられた。
「認知症の初期段階で医療機関につなげるために、家族やケアマネジャーが初期の症状をチェックできるスクリーニング表のようなものがあるといい」(介護・福祉関係者の委員)
「かかりつけ医から認知症外来の紹介があり、フルセットの検査、それ以外のMRIなどを行なうと患者さんの金銭的負担が大きく、患者さん側にあまり認知症の認識がないと不満になりやすい。どういうタイミングで専門医に紹介するかは検討材料」(医療関係者の委員)
「地域にキーパーソンがいない。家族がいれば包括から情報提供できるが、独居の人にはむずかしい。専門医に連れていこうとしてもお金を払うことに納得を得にくいことも。区に専門医がいて相談日があるといい」(介護・福祉関係者の委員)
「ケアに携わる者が認知症の兆候に気づいたとき、家族に伝えるためのスクリーニングみたいなものがあるといいと感じる。とくに遠距離にいる家族に伝えるときは、根拠のあるものがあればいいと思う」(介護・福祉関係の委員)
これらの意見に対し、医療関係者から、「家族やヘルパーさんが兆候に気づいて連れてきた時は、どの程度の方なのかイメージしながら、時間をかけて質問する。スクリーニングという簡単なやり方はないのではないか」「チェック表はあってもいいが、変だ、何か起きていると気づいて、受診につなげることが大切。チェック表に縛られ、逆に見落とすこともあるので、慎重であるべき」という意見が出た。
議論の最後に部会長から、「とくに独居の高齢者の受診へのつなげ方は、課題としてこれからも考えていきたい」「こういう連携であれば連携ツールを生かすことがわかれば、どういう連携ツールが必要かという議論に生かすことはできるのだが、なかなかそれをイメージできず、議論が止まっている」との提言と注文がなされた。
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