認知症のアセスメント視点は「記録」と「観察」が重要――日本コンピュータコンサルタント講演会レポート

介護業務総合支援ソフト「介舟ファミリー」でおなじみの株式会社日本コンピュータコンサルタントは、9月27日、都内で講演会「認知症利用者と家族のアセスメント視点と証明」を開催した。

講師は東洋大学ライフデザイン学部准教授の柴田範子氏。柴田氏は長年ホームヘルパーとして現場で活躍した後、NPO法人「楽」を立ち上げ、認知症デイサービスや小規模多機能事業所を運営。現在も日々、認知症高齢者と接しながら、教鞭をとっている。

要介護高齢者のプランを手がけているケアマネジャーのなかには、「なぜアセスメントをして計画を立て、支援しても、考えられる効果が生まれないのか」と悩んでいる人も多いことだろう。こと認知症高齢者の場合は、本人から直接要望を聞くことができない場合が多く、「成果」を出すのはいっそう難しい。

柴田氏はそんな現状を、「アセスメントをするといいながら、実は目に映っている認知症高齢者の、一般社会で言う『問題行動』のみに焦点を当てていませんか」と問いかけた。また、「その家族が求める介護サービス内容にのみ焦点を当てていることはないか」とも。

認知症高齢者の場合は、上に挙げたようなアセスメントでは確かな効果を得ることは難しく、まず一人ひとりをじっくり観察すること、そして「認知症高齢者の気持ちに沿ってみる」ことが重要だと語った。

その手段として、柴田氏はまず、「もしあなたが、まったく知らないところに一人だけ置かれたら、どんな気持ちがしますか?」と参加者一人ひとりにマイクを向けた。すると、「不安」「怖い」「落ちつかない」「早く家に帰りたくなる」という声が次々に挙がった。これはまさに、認知症の人の気持ちそのもの。

また、認知症の人自らが公の場で自分の気持ちを語った言葉を引用し、「認知症の人は、自分が自分でなくなる不安と怖さに常にさらされている。また、自分がどう感じているかを表現することが難しくなってくる」と、認知症の人が何もわからなくなるわけではないことを訴えた。

柴田氏は、認知症の人の現状と気持ちを知る手段として、
1)私の不安や苦痛、悲しみは……
2)私がうれしいこと、楽しいこと、快いと感じることは……
3)私がやりたいことや願い、要望は……
4)私が大切にしていることは……
の4つのカテゴリーに分類して記録することで、その人の姿が見えてくるという。たとえ会話が成立しなくても、その人の症状や行動パターンを観察することで、上記のどれかにあてはめることができる。「常に意味をもってその人を観る(=アセスメント)ことによって、なぜその人がそういう行動をするかを考えられるようになるのです」(柴田氏)。

これらを知るためには、その人の日々の記録も重要だと柴田氏は語った。「日々の記録は、その人に接したヘルパーや職員しか書くことができず、その人が語った意味のある会話だけでなく、表情や家の様子など些細なことも記録し、後日、その日々の記録からさらに残しておきたい事項を情報収集シートに加えていく。その際に、時系列がわかるよう日付も記載し、変化がわかるように記録することも大切です」。そうした情報をケアマネジャーがしっかりキャッチし、そこに書かれている「変化」を読み取ることで、成果のでるプランに生かせるというわけだ。
「評価の根拠は日々の記録であり、変化を証明するには、日々いかに記録するかが重要。だから、決して『変わりなし』という記録をしてはならないのです」(柴田氏)。これはケアマネジャーのみならず、要介護高齢者にかかわる介護職すべてが肝に銘じておきたい言葉だ。

柴田氏はまた、実際のアセスメントで重視するのはADLよりIADLであり、視点は常に「〜できる」と肯定的に捉えることが重要だという。たとえ「できないこと」であっても、たとえば「言葉をかけることで〜できる」「手伝うことで〜できる」と、肯定的に捕らえることで、できることを引き出すことが可能だと語った。

認知症の人を家族がもてあまして施設にお願いしても、そこでもなじめず、拒否されるケースが多い。そうなると行き先は病院しかなくなり、病院に入ってしまうと二度と出られません。しかし、記録を重視したアセスメントを行うことで、その人がどういう気持ちなのかがわかってくれば、在宅や施設で看ることは決して難しくありません」。自らの経験から語られる言葉は重く、受講者は柴田氏の一言一句を深く心に刻んでいるように見えた。

最後に柴田氏は、「これからの介護の中心は認知症ケアになってきます。それができれば、いかなる症状にも対応できるようになります。最初の1〜2年は厳しくても、やるべきことをきちんとやっていると、そのうち必ず成果が見えてきます。そうすると仕事は必ず面白くなるので、皆さん、がんばってください」とすべての介護関係者にエールを送った。

◎株式会社日本コンピュータコンサルタント

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