「胃ろう逆流して窒息死も」苦い経験語る――特養常勤医講演会レポ(1)

公益社団法人認知症の人と家族の会は、アルツハイマー病の啓蒙を実施する「世界アルツハイマーデー」活動のひとつとして、9月17日に、第18回アルツハイマーデー記念講演会を全国各地で開催した。

東京においては、特別養護老人ホーム「芦花ホーム」常勤医で、『「平穏死」のすすめ』(講談社)の著書がある石飛幸三氏による講演「変革の時を迎えた高齢者終末期医療」が行なわれた。

石飛氏は、外科医として40年以上のキャリアをもち、東京都済生会中央病院副院長を経て、2005年より東京・世田谷にある「芦花ホーム」に勤務。患者の救命に取り組む大病院から患者を看取る特養へ。全国でも数少ない特養の常勤医として関わってきた終末期の看取りについての提言は、認知症患者の家族をはじめ、高齢者介護医療に関わる人の大きな支持を得ている。この日も、開演前から多くの聴衆が来場し、340の客席はまたたくうちに埋まり、石飛氏の話に熱心に耳を傾けた。

世界で有数の長寿国となり、認知症患者が約200万人と言われる現在、医療は終末期にどこまで介入するべきか――医療介護の現場は、今、大きな課題に直面しており、「その典型例が口からものを食べられなくなった時」と石飛氏。「体が衰えて嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎を発症すると、病院では点滴や中心静脈栄養、施設に戻るときには胃ろうを造設される。このサイクルが日本中で回っています。果たして、それが本人のためなのだろうか」。

食べ物を受けつけられなくなった体に、強制的に一定量の栄養を送るのが胃ろうだと言う。無理やりの栄養補給はいずれ体が拒否し、逆流して肺炎を起こすか、嘔吐したものをつまらせて窒息してしまうことに。「口から栄養をあふれさせ、窒息死した方を発見した時は本当にショックでした。しかし、栄養の量を少しずつ減らしてみると、あふれたり、肺炎を起こしたりすることがなくなりました。つまり、終末期を迎えた人にとっては、ただ栄養を入れればいいわけではない。1000キロカロリーを800カロリーキロと減らしいくと、痰の量が減り、1日600カロリーまで減らせることがわかりました」。

認知症患者の胃ろうの本質的な問題は、「本人が、『いっぱいだからもういい』」と言える状態ではないこと」と石飛氏は言う。芦花ホームの入所者は、平均年齢90歳、9割が女性で、要介護度は平均で4.7。9割が認知症を患っている。また、胃ろうのきっかけとなる嚥下機能低下による誤嚥性肺炎も、要介護度の重い、体の機能が衰えた人に「あとひと口でも食べて体力をつけ、元気になってほしい」という気持ちで食べさせたことでむせてしまい、発症につながっていたと言う。「元気になってほしい」。それは家族の想いを受けてこその行為で、その結果として病院に運ばれ、処置を施される……そういうサイクルが芦花ホームで起こり、全国の介護施設で今も起きていることだと言う。

「終末期になり、胃ろうをつけている人は8割もいます。なぜそうなるのかというと、『何もしないでいいのか』と医者が考えるから。自然死が近づいた時、栄養や水を与えないとどうなるかを医者も知らないのです。そして、病気という人生途上の危機を治す病院では、何らかの治療をしてしまうものです。しかし、それが本当に役にたつのか。老衰の最後を医療に依存していいのか。そのことを考えないといけない」と言う石飛氏の言葉は、重く深い。

◎認知症の人と家族の会

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