日本介護支援相談員協会は、9月1日、厚生労働省の助成事業「2011年度厚生労働省老人保健健康増進等事業」に申請した事業が採択されたとの内示を受け、4つの調査事業を実施することを発表した。
それぞれの事業の主旨と内容は下記の通り。
1)24時間地域巡回型訪問サービス提供体制におけるケアマネジメントのあり方の調査研究事業
「地域包括ケア」を実現させるため、欠かせないのが24時間地域巡回型訪問サービス(定期巡回・随時対応型介護看護)。同サービスでは、実際に訪問している介護職員・看護職員のチームが行う継続的アセスメントに基づき、介護支援専門員が協働でケアマネジメントを行う形で連携を図り、他のサービス提供事業者と情報を共有しながら利用者のニーズに即したケアプランを作成することが必要となる。
そこで、要介護高齢者のニーズを的確に把握し、24時間のケアマネジメント体制を実現するために必要な環境整備、医療と介護の連携など、ケアマネジメントのあり方について調査研究する。
2)レスパイトケアの推進に資する短期入所生活介護のあり方に関する調査研究事業
在宅ケアを担う家族の疲労を癒やすため、ケアを一時的に代替する「レスパイトケア」。制度上は1976年にショートステイとしてスタートしたが、施設ケアで利用者の日常生活が崩れること、家族がケアを休むことへの抵抗などの問題もあり、十分に機能していないのが現状だ。
高齢者の支援がより効果的に行える短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)のあり方を検討するため、ショートステイの利用率や予約・キャンセル状況、ケアプランと利用者とのマッチング、緊急時の介護支援専門員およびショートステイ事業者の対応について、地域差や利用者の家庭環境(独居・老老・同居)も含めて調査研究を行う。
3)医療ニーズが高い要介護者への訪問看護導入等に向けた課題に関する調査研究事業
高齢化や在院日数の短縮により、在宅で暮らす医療ニーズの高い要介護者はますます増大すると考えられる。2010年度「医療ニーズが高い利用者に対する地域における支援(特に訪問看護)に関する調査研究事業」では、療養生活支援の一翼を担う訪問看護に焦点を当て、介護支援専門員を対象に全国調査を実施したところ、訪問看護が必要と判断されながら利用に至っていないケースがあることがわかった。また、要介護者の状態像により、訪問看護の導入が比較的容易な場合とそうでない場合があることも明らかになった。
その知見を基に、事業では、訪問看護が必要と判断されつつも、利用に至っていない理由を詳細に調査し、明らかにする。また、介護支援専門員が訪問看護の導入を適切に行うためのツール開発(マニュアル、アセスメントツール、啓発ビデオ等)を行う。
さらに、医療ニーズの高い要介護者を支えるために必要な介護支援専門員などの人材育成上の課題や、地域での連携システムのあり方を検討する。これらの結果を踏まえ、在宅医療ニーズの増大に対応するために必要な地域におけるケアシステムの構築に向けた提言を行う。
4)介護支援専門員研修受講管理システム・生涯学習体系実施体制の推進事業
介護支援専門員に関わる課題を実施し、そのための体制づくりを行なうシステムを検討する。具体的な課題は以下の通り。
・介護支援専門員はケアマネジメントプロセスを遂行する上で、欠けている点、困難さを感じている分野がある。
・キャリアアップイメージはあるが、専門性の特性が認識されておらず、専門的職能としての到達目標が明確でない。
・研修の取り組みはあるが、生涯学習の概念では捉えられず、学習継続の体制が整っていない。
・法定研修と自発研修の受講において、日常業務への支障や研修受講の負担がある。そのため、意欲の多少や自らの受講履歴管理で個人差が大きい。
・サービス利用者や社会の変化により、求められる役割や能力が変化することへの備えが必要である。
・基礎資格の多様性など養成プロセスが多様であることを補完し、実務能力のレベルをそろえ、能力水準の高度化に対応する必要性がある。
・質を高めるためには、相応の研修を着実に効果的に実施することが必要。そのためには、地域・都道府県・国レベルでそれぞれ担う役割を明確にし、連携をもつ必要がある。
・資格管理と受講履歴管理を確実にすることで、生涯学習体系の視点で、経験やステップアップの時期に応じた計画的な受講・育成が可能になる。