大阪バイオサイエンス研究所の古川貴久研究部長と佐貫理佳子研究員らは、JST課題達成型基礎研究の一環として、「マイクロRNA」の一種が脳や網膜などの神経回路の形成と神経細胞の生存に重要であることを明らかにした。
RNAは、「リボ核酸」のことでアミノ酸を運搬、結合し、タンパク質を合成する役割を持つが、なかでも、短いRNAであるマイクロRNAは、これまで機能が不明だった。今回の研究では、マイクロRNAの一種が機能しないマウスをつくることに世界で初めて成功。この欠損マウスでは、脳全体が小さく、脳の発達障害を起こしていることが判明した。
特に、記憶を司る「海馬」の神経回路形成に異常が認められ、網膜では視力と色覚を司る神経細胞が死んでいることが発見された。
これによって、脳や網膜などの中枢神経系の神経回路の形成、神経細胞の生存にマイクロRNAが重要な役割を担うことが、生体レベルで初めて証明された。
このマイクロRNAの一種を含む染色体領域の欠損、重複によって、てんかんや自閉症などの精神神経疾患が起こることはすでに知られている。今回の研究成果が、精神神経疾患のさらなる原因究明や神経系の再生医療に貢献することが期待されている。
■関連記事
・よりヒトに近いマウスの脳で認知症の原因を追跡――理化学研究所
・認知症につながる脳の疲労が体内滋養成分によって自然緩和――東京大学