社会福祉法人康和会「久我山病院」は、8月5日、病院内の会議室で「地域包括ケアの明日を考える会」を開催した。杉並地域の介護保険サービス事業所のケアマネジャーや在宅医ら約30名が参加した。
久我山病院では、地域の方々に病院を地域の社会資源として活用していただけるように「医療介護相談センター」を開設して、入院前から退院後までのトータルサポートとして、介護サービス事業所や在宅医療などと連携を進める発展的な取り組みを行っている。
「地域包括ケアの明日を考える会」は、そうした取り組みの一環として定期的に開催しているもので、第5回目となる今回のテーマは「特発性正常圧水頭症iNPH」の疾患勉強会。iNPHの疾患啓発に取り組む、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)コッドマン事業部の佐々木博信氏を講師に迎え、教育講演がなされた。
冒頭、久我山病院脳神経外科の宮崎医師から、「特発性正常圧水頭症iNPHを介護職の皆さんにも注目してほしい」と挨拶があり、その後、佐々木氏から、「急速な高齢化に伴い “改善する認知症”の代表的な疾患であるiNPHが注目されている」と現状と背景について語られ、iNPHの特徴的な症状について、患者さんの動画や症状のチェックリストを交えながら説明がなされた。
佐々木氏はさらに、iNPHの検査や治療方法、さらに介護度が改善する治療評価を紹介しながら、治療改善について述べた。また、高齢者の寝たきりの原因となる「転倒」とiNPHの関係についても付け加え、よくなるにも関わらず見過ごされている高齢者が大勢いる現状から、「第一客観者であるケアマネジャーのみなさんに、利用者(患者)の症状に気付いていただきたい。症状に気付き利用者(患者)へ専門医療機関の受診をお勧めしてほしい」と訴えた。
質疑応答では、参加したケアマネジャーから「利用者は、かかりつけ医との関係をくずしたくないために、専門医療の受信をいやがる場合も少なくない」「独居の認知症の方を専門医療機関の画像診断まで持っていくのは非常に困難」と現場の声を伝えた。在宅医からは「チェックリストなどの客観的な指標を使っていただいて、疾患の疑いを相談していただければ専門医を紹介しやすい」との指摘があった。
佐々木氏は、「認知症の原因疾患を鑑別せずに“認知症”とひとくくりにすることは、たとえば腹痛の患者さんに、“腹痛ですね”と診断しているようなもの。どのような認知症か更に担当の医師に聞いて欲しい」と、認知症がひとくくりにされている現状が示された。
医療側と介護側との認識共有が進むことで、患者が適切な医療を提供され、高齢者とのご家族の生活の質が向上すれば、今後、地域連携の大きな成果になることが期待される。
■関連記事
・特発性正常圧水頭症のホームページをリニューアル――J&J
・水頭症による認知症治療で介護保険が4600億円削減