8月10日に開かれた第78回社会保障審議会介護給付費分科会では、改めて、時期介護報酬改定に向けた主な論点が整理され、委員から追記すべき事項など、フリーディスカッションが行われた。
武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、介護職員などによるたんの吸引などの実施に向けて制度が整えられつつあることについて、「たんの吸引などが必要な利用者に手を取られて他に手が回らなくなるのでは…。『重度加算』のようなものを考えているのか?(医療必要度の高い利用者を)引き受けた特養などは、何らかの経営的なインセンティブが働くようにしてはどうか」と提案。また、特養内に医務室として診療所が必置となっていることについては、「周りに診療所がたくさんある場合には、選択制にしてほしい」と訴えた。
齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は、「特養の生活相談員とケアマネは業務がだぶっているのではないか。他職種との役割分担を考えるべき」と指摘。
また、木村隆次委員(日本薬剤師会常務理事・日本介護支援専門員協会会長)は、「『医療と介護の連携について』の項目で、薬剤管理指導、口腔機能向上、栄養改善の3つが機能することが大事。これらの連携についても論点に入れてほしい」と主張した。
このほか、この日は、「特別養護老人ホームにおける入所申込の実態に関する調査研究」を座長として実施した栃本一三郎氏(上智大学総合人間科学部長)が参考人として出席。どう研究の結果概要を説明した。なお、報告書は今年3月づけで公表されている。
調査は、全国の特養から1,500施設を無作為抽出し、実施したもの。592施設から回答を得られた(回収率39.5%)。
医療処置が必要な入所申込者について「お断りすることがある」、「原則としてお断りする」と回答した施設の割合は、「吸入、吸引」では58.4%、「経鼻経腸栄養など」では56.4%といずれも過半数を占めていた。
また、申込者のうち、「優先して入所させるべき」と考える人の割合は、10.8%であったという。ここで、「優先して入所させるべき」と考える人の条件として挙がったのは下記のとおり(複数回答)。
・介護放棄、虐待などの疑いがある 71.3%
・介護者が不在、1人暮らし 62.2%
・施設、病院から退所、退院を迫られている 36.1%
・要介護度が一定水準以上 34.3%
・家族が入所の必要性を強く訴えている 24.3%
・認知症による常時徘徊などの周辺症状がある 17.4%
こうした結果を受けて栃本氏は、「平成21年度の厚生労働省の全国調査の入所申込者数42.1万人にあわせて示せば、ただちに入所が必要だが入所できない人が4万人いる」、「経管栄養などの医療処置が必要な人、常時徘徊、精神症状が強いなど、受け入れが制限される申込者が増加している。現在の施設数を増やしても解決しない」と、問題点を指摘した。
こうした栃下氏からの報告を受けて勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は、「利用者側としては、『真に入所が必要な人が4万人』という数字が一人歩きしないか不安」と話した。
また、他の委員からは、「実際、とりあえず早めに申し込みをする人も多い」と、報告に共感する声も挙がり、ケアマネジメントの重要性も含め、入所申込に関する仕組みに改善の余地があるのではないかとの意見もあった。