トロミ調整食品などの高齢者・介護対応食品を製造・販売している日清オイリオグループは、夏の在宅介護における不安要素を調べるため、高齢者の在宅介護している方々に「夏場の介護事情に関するアンケート調査」を実施した。
その結果、要介護者に水分を与えることが大切であると認識はしているものの、実際には与えられない現状が浮き彫りとなった。昨年同様の猛暑が予想されるうえに、節電を強いられている今年の夏は、要介護者の熱中症対策として「いかに水分をとってもらうか」がポイントになりそうだ。
●今年の夏の不安、「熱中症」は昨年の2.6倍
在宅介護において、今年の夏、不安に思うことの第1位は「熱中症」(90%)次いで「水分補給(脱水)」(83%)となった。それに対し、昨年困ったことの第1位は「水分補給(脱水)」(53%)、第2位「体温・室温調整」(41%)、第3位が「熱中症」(34%)で、今年の夏は熱中症を心配している人が昨年の約2.6倍となった。
●与えたい水分量と実際の摂取量との間にギャップが
熱中症予防としてこまめな水分補給が必要ですが、50%の人が1日「1,000ml以上」の水分摂取が必要だと回答しました。それに対し、実際の摂取量は74%の人が「1,000ml未満」と答えた。このことから、水分摂取の必要性は分かっているが、実際には摂取できていない実情が明らかになった。
●ギャップの原因は「お互いの気遣い」か
水分補給で困ったことのうち、「要介護者がトイレの回数を気にする」(50%)が半数を占めました。他にも、「水分補給を嫌がる」(29%)、「ひとりでは飲まない」(17%)、「むせてしまう」(10%)等、トイレを気にする要介護者側の気遣いと、飲ませたいが嫌がるので飲ませられないという介護者側の気遣いがあることがわかった。
●要介護者の“むせ”の経験は85%
飲食中「むせた経験がある」・「時々ある」と答えた人は全体の85%と、日常的に“むせ”が起こる要介護者が多いことが明らかとなった。
【考察】
厚生労働省の発表によると昨年(2010年)の熱中症による死亡者数の約80%が65歳以上の高齢者で、発生場所は「家(庭)」が45.6%と、最も多かった。昨夏は平均気温が過去113年間で最も高い「猛暑」だったが、今年は既に6月の観測記録1位を記録しており、夏にはさらなる猛暑が予測される。さらに今年は節電の関係もあり、夏の在宅介護は昨年に比べ「熱中症」「水分補給(脱水)」に対する不安を抱えている人が増えている様子がうかがえる。
熱中症対策として、こまめな水分補給の大事さは認識しているが、要介護者がトイレを気にして水分をとりたがらないことに加え、要介護者の85%が日常的に“むせ”を経験していることがわかった。これが「水分を嫌がる」、「ひとりでは飲まない」ことの原因のひとつになっていると考えられる。日常生活の中で、要介護者が安心して、かつ安全に水分補給をすることが今年の夏の在宅介護で重要な鍵となりそうだ。
【専門家のコメント】
柳沢幸江(やなぎさわ ゆきえ)和洋女子大学・健康栄養学類 教授
「この時期の水分補給はとても重要だと思います。十分な水分補給ができるよう、予め1日に飲む飲料(お茶や嗜好飲料等)を冷蔵庫に準備しておくことも大切です。準備しておくことで介護する側も、される側も飲んだ量がわかりますので、水分の摂取不足が起きにくくなります。水は、普通の人にとっては飲み込みやすいものですが、嚥下機能が低下している人にとっては水や水のような液体がむせやすくなります。この場合、むせないようにとろみをつけたり、水分補給用ゼリーなどの介護食品を利用し、十分な水分補給を心掛けることが重要です」。
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