国民生活センターは、「被災者支援などを名目とした『温泉付き有料老人ホームの利用権』の買取り等の勧誘」に関する相談事例とアドバイス等を6 月24 日、ホームページ上で公表した。
同センターで確認した限りでは、このトラブルにおける販売業者は「緑開発合同会社(以下、緑社)、合同会社グリーンアート(以下、グ社)、及び合同会社三葉コーポレーション(以下、三葉社)」の三社である。さらに、有料老人ホーム運営会社は、いずれも「アプリコット合同会社(以下、ア社)」であった。
相談の特徴としては、詐欺的な劇場型勧誘のトラブルが目立ち、特に高齢者の相談が多い。さらに、ア社の「温泉付き有料老人ホーム利用権」の契約後に、申込書には記載のないア社の「社員券」が販売業者から送付されているが、「社員券」に関する事前の説明は全くない。また、どのような契約内容なのか明らかでない。そのほか、金融商品取引法違反の疑いなどもある。
そこで、トラブル拡大防止の観点から、ア社の「温泉付き有料老人ホーム利用権」については絶対に契約しないよう、特に高齢者に向けて注意を呼びかけることとした。
■相談事例:
電話で突然、見知らぬ業者(以下、買取業者)から、「緑開発合同会社(以下、緑社)が、アプリコット合同会社(以下、ア社)の温泉付き有料老人ホームの利用権を販売しているが、これは個人しか買えないので、代わりに買って欲しい。もし買ってくれれば、購入金額に少し上乗せした額で買い取りたい。1口20万円だが、3口にまとまるとさらに良い」との連絡があった。その後、緑社から、ア社に関する有料老人ホーム利用権に関する資料と申込書が送付された。
その後も買取業者から購入を何度も電話で勧められたため、根負けして緑社からア社の利用権を2口購入した。そうしたところ、何故か緑社が1口分をサービスしてくれたので、買取業者に「3口用意した」と伝えたところ「3口目は月末の購入なので、決済に間に合わない。来月の買い取りになる」などと説明された。また、緑社からは、サービスのはずだった3口目の代金も早く支払うようにせかされ、言われるがまま仕方なく支払った。
その後、当初の2口を買ってもらうため、買取業者と近くの銀行の貸室で会う約束をした。しかし、銀行に確認したところ貸室の予約が入っていなかったため、そこで初めて騙されたことに気が付いた。60万円を返金して欲しい。その後、ア社の「社員券」が緑社から送付されている。
■問題点:
・ア社は開設に必要となる自治体への届出手続を全く行っておらず、また、今後も建設予定地の自治体との協議が行われない可能性が非常に高い。
・自治体との協議が行われなかった場合、ア社は無届でホームの開設を行うか、あるいは有料老人ホームとして利用させる義務を果たせなくなるかのどちらかになる可能性が非常に高い。
・購入申込書には、「箱根温泉付有料老人ホーム利用権」との記載があるだけで、「社員券」に関する記述は全くなく、契約内容が明らかにされていない。
・また、この取引が「合同会社の社員権」の販売であった場合、金融商品取引法の適用を受けると考えられる。
・当該取引において金融商品取引法が適用される場合、「合同会社の社員権」を販売する会社は金融商品取引業の登録が必要となるが、販売業者については金融商品取引業の登録が確認できず、違法な取引となるおそれが高い。
・販売業者や運営業者の関係者が買取業者をかたって、消費者に買い取りを持ちかけ、詐欺的に有料老人ホーム利用権を販売している可能性が十分に考えられる。
■消費者へのアドバイス:
・「高値で買い取る」と持ちかける業者の話は絶対に信じないこと
・有料老人ホームの開設手続が行われておらず、具体的な契約内容も不明確なアプリコット合同会社に関する話には乗らないこと
・有価証券の取引である可能性があるため、契約内容が明らかにならなければ契約しないこと
・トラブルにあったら、すぐに消費生活センターに相談すること
なお、こうした勧誘があった場合、各自治体の消費生活センター等に相談するよう呼びかけている。
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