6月20日、東京都渋谷区にて、東京都社会福祉協議会介護保険居宅事業者連絡会の主催による地域包括ケアシステムに関する「シンポジウム及び情報交換会」が開催された。今回のテーマは「東日本大震災を通してわかった、福祉事業所の大震災における課題と対応方法の共有化〜状況把握調査を参考に〜」。
まず東京都社会福祉協議会が実施した「東日本大震災に伴う介護事業所の状況把握調査」の集計結果の概要報告があった。これは、今回の地震が介護事業所に与えた影響と課題、対応状況を把握することにより、今後の部会・連絡会活動の参考にすることを目的としたものである。
報告終了後は、業種別のグループごとに情報交換がスタート。どのグループも活発に話し合いが行われ、最後にグループの代表による発表が行われた。
居宅介護支援グループからは、「(地震発生時)利用者の安否の確認はしたが、障害者は行動範囲が広いため確認が難しかった」「老老介護の家庭に介護関係者が集中しがちだった」「地震発生時に、事業所・行政・地域をどう連携していくかが課題である」などの意見が出された。
被害がほとんどなかった東京都でも、ケアマネジャーはじめヘルパー、民生委員、デイサービス職員らは利用者の安否確認に追われたことがうかがえたが、多くが独居や老老世帯に集中し、誰も安否確認に駆けつけなかった利用者もいたということである。統制のとれた行動をするためには、地域包括支援センターが中心になってマニュアルを作成する必要があるという意見もあった。
一方、訪問介護・看護グループからは、「多摩地区では自動車で移動してサービス提供しているため、ガソリン不足が問題になった」「中野区はデイサービスの利用者の送迎車両に優先的にガソリンを供給したと聞いているが、こうした対応が望ましい」との声が。通所サービスグループからも中野区の対応に対して評価する意見があった。行政の判断が素早く的確だと、その後の混乱が少なくて済む好例と言えよう。
また、ふだんからの防災対策として、「職員の安否確認をメールで2カ月に一度テストしていたが、震災時にはつながらなかった。現在、今後の方法を検討中」「ヘルパーにはヘルメットを、利用者には防災頭巾の活用を考えている」などの意見もあがった。地域包括支援グループからは「デイサービスの入浴時にエレベーターが止まったため清拭となった」「計画停電に関して高齢者は情報把握を十分にしていなかった」。
施設グループからは「エレベーターが止まったため食事を階段利用で運んだ」「ガスが止まったため非常食となった。都では3日分を備蓄することになっているが、これでは足りない。6日分は必要。また高齢者に乾パンは適切ではない。その内容も検討すべきだ」と、施設内備蓄の内容も今後検討されるべきとの声があった。
――東社協シンポ(2)へ続く
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