メルシャン株式会社は、奈良女子大学生活環境学部の井上裕康教授および中田理恵子講師と共同研究の結果、ポリフェノールの一種「レスベラトロール」を含む赤ワイン中の成分が、心臓の脂質代謝に関連する遺伝子の発現を増強させるため、血液中と細胞内の遊離脂肪酸のクリアランスに有効である可能性を発見した。
「フランス人は肉や乳製品など動物性脂肪を多く摂取するにもかかわらず、心筋梗塞などの心疾患による死亡率が低い」という、いわゆる「フレンチ・パラドックス」は世界中で知られている。この「フレンチ・パラドックス」はフランス人のワインの摂取量が多いことに起因しているといわれているが、その詳細なメカニズムは分かっていなかった。
同社では、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種である「レスベラトロール」をはじめとして、赤ワインやその成分について長年に渡り研究を重ねる過程で、「フレンチ・パラドックス」に「レスベラトロール」が関与しているのではないかという仮説を持ち、今回メカニズム解明のための共同研究を始めるにいたった。
■実験方法:は脂肪酸代謝において重要な役割を担う核内受容体PPARα(※)の遺伝子の働きを不活性化したマウスと野生型マウス(11〜12週齢、雄)に、「通常の飼料」あるいは「ワイン凍結乾燥物を含む飼料」をそれぞれ自由に摂取させ、6カ月間飼育。その後、解剖により心臓を採取し、心臓の遺伝子の発現変動を解析した。
■結果:「ワイン凍結乾燥物を含む飼料」を摂取した野生型マウスの心臓では、「通常の飼料」を摂取した野生型マウスの心臓と比較して、脂肪酸β酸化や遊離脂肪酸の細胞内への取り込みに関与する遺伝子の発現が増強する傾向が見られた。つまり「レスベラトロール」を含むポリフェノールを摂取することで、心疾患になりにくい遺伝子が生まれやすくなることが証明された。
※PPARα……核内受容体の一種。主に、肝臓、心臓、骨格筋などに分布し、脂肪酸代謝において重要な役割を担っている。