5月23日、日本在宅介護協会東京支部主催のセミナー「感動のケアマネジメント〜地域包括ケアをふまえ、どうケアマネジメントしていくか〜」が開催された。
厚生労働省老健局振興課長の川又竹男氏、慶應義塾大学大学院教授の田中滋氏の基調講演に続いて行われたシンポジウムでは、「地域包括ケアを踏まえどうケアマネジメントしていくか」をテーマに、東畠弘子氏(日本社会事業大学社会事業研究所研究員福祉ジャーナリスト)の司会進行のもと、4人のシンポジストが登壇した。
このうち、板垣恭子氏(日生薬局介護支援事業部管理者 ケアプランアドバイザー)は、都市部のA区を活動地域とする介護支援専門員を対象に、担当していた独居高齢者75名についてアンケート調査を行い、その結果を発表した。75名はいずれも平成19年度に居宅介護支援を終結した人で、独居の理由や家族状況、家族・親族・近隣との関係、在宅ケア終結の理由などについて調査を行ったもの。
在宅ケアを終結した独居高齢者の年齢は、75〜85歳未満が33.3%で最も多く、85〜95歳未満(29.3%)、95歳以上(25.3%)、65〜75歳未満(8.0%)、65歳未満(4.0%)という結果だった。これについて板垣氏は「75歳くらいで独居の限界がくるのではないか」とコメント。また、独居の理由は、「配偶者との死別」が64.0%で最も多く、「誰でも独居になる可能性がある」と示唆した。
さらに、「経済状況により在宅ケアの終結理由が異なる」とも指摘。アンケートによると、在宅ケア終結の理由は、全体では1位が「病院入院」、2位が「施設入所」だったが、経済状況が「ゆとりあり」の人の場合は「施設入所」が最も多く、一方で、「生活保護」の人は「病院入院」に次いで「孤独死」が多かった。
また、経済状況が「普通」「ゆとりあり」の人は、家族・親族などと「週に数回以上」、あるいは「月〜年に数回程度の行き来」がある人がほとんどである一方で、「生活保護」の人の71%が「家族・親族などとの行き来なし」とであり、「特に支援が必要な独居高齢者は、キーパーソン不在かつ低所得の高齢者」とまとめた。
このほか、株式会社ニチイ学館の種元崇子氏は、「事業者における研修の意義」について話し、事業者としての課題は「経費の確保」と「時間の確保」と指摘。まず、経費の確保に関しては、「標準担当件数の実施は、研修費の確保のためには重要」と述べ、時間に関する対応策としては、1)計画的な居宅介護支援業務、2)計画的な研修受講体制の整備、3)事業者内、事業所内での情報共有、4)研修方法、研修環境を考慮――という4つを挙げた。
このうち、第一の計画的な居宅介護支援業務の一例として、音声認識システムを活用し、介護現場で口頭で報告を行えば、事務所のパソコンに記録が残るといったモデル事業を行っていることを紹介。「時間をいかに利用者に還元するか」という考えで業務のIT化を進めていることを説明すると、会場からは感嘆の声が漏れていた。
コーディネーターの東畠氏は、「『ケアマネの質が利用者に直結する。だから、研修が必要』という意見を受け、ただ研修を受けるだけではなく、共有することが大事だと再認識した」と、感想を述べた。
――在宅協セミナーレポ2へ続く
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