株式会社カネカは、信州大学大学院医学研究科加齢適応医科学系加齢生物学分野の樋口京一教授と共同で、還元型コエンザイムQ10(以下、還元型CoQ10)に加齢性難聴の進行を抑制する効果があることを、動物実験にて確認したと発表した。この結果は、5月27日〜29日に開催される第11回日本抗加齢医学会総会で発表される。
同社は樋口教授との共同研究で、還元型CoQ10を老化促進モデルマウスに幼若期から継続摂取させることで老化が遅延することを既に2006年に報告しているが、今回の試験は、 1、7、13月齢(それぞれ幼若、成熟、高齢期)のマウスに、還元型CoQ10を0.3%の割合で混合した飼料を自由摂取させ、体重、摂食量及び老化度を、還元型CoQ10を含まない通常の飼料を与えたマウス(対照マウス)と比較した。また聴性脳幹反応法(※)にて、2、7、13、19月齢のマウスの聴力を測定し、加齢性難聴に対する還元型CoQ10の進行抑制効果を解析した。
※聴性脳幹反応法:耳から入った音刺激により惹起される脳幹の脳波をコンピュター解析して聴力を判定する臨床検査法で、診断的価値が極めて高く、難聴や脳幹障害の診断に利用されている。
その結果、老化に関しては、成熟期及び高齢期より還元型CoQ10を摂取したマウスでは老化度上昇を抑制する効果は見られなかったが、幼若期から摂取したマウスでは、対照マウスと比較して19月齢まで低い老化度を示し、老化の進行が抑制された。
また聴力に関しては、対照マウスは4例中全例が7月齢で高音域障害を、13月齢で中低音域障害を発現し、19月齢では2例中全例がほぼ完全に聴力を失ったが、還元型CoQ10を摂取したマウスについては、高音域、中低音域ともに障害の程度が軽く、顕著な障害低減効果が現れた。
化粧品や健康食品などにも使われているCoQ10には酸化型と還元型があるが、体内では大部分が還元型として存在し、エネルギー産生賦活や抗酸化作用など、細胞が正常に機能するうえで必須の作用を発揮していると考えらている。
従来からの酸化型が機能を発揮するためには、体内で還元型に変換される必要があるが、最近の研究では、体内での変換力は加齢や病気等によって低下することがわかってきている。同社が世界に先駆けて開発した還元型CoQ10は、体内で変換の必要がなく、酸化型よりも幅広く優れた生理活性を発揮するとことが期待される。
■関連記事
・雑音抑制機能搭載の低価格デジタル補聴器発売――フジ医療器
・相田翔子さん、難聴体験語る――シーメンス補聴器新作発表会