東京都医療社会事業協会が主催する公開講座「病院ってどんなところ」が、3月5日、品川区で開催された。老人性認知症の治療および相談援助にかかわる現役MSW3名が、治療病棟や介護療養病棟の役割について話した。
司会を務める東芝病院MSWの平林朋子氏からは、「認知症の早期発見といっても、精神科を受診する心理的ハードルは高いのでは」と問題提起があり、会場のケアマネジャーからも「そのために主治医を変えることに高齢者は抵抗感がある」と意見があった。
順天堂東京江東高齢者医療センターの塩路直子氏は、精神科を受診したがらない高齢者への対応として、「認知症サポート医が勤務する精神科以外の病院を、地域の医師会を通じて探してはどうか」と提案。 より緊急度の高いケースについては「保健所の高齢者医療相談班に、ケアマネジャーなどが相談すると、精神科の医師が在宅訪問してくれる」と話した。
パネリストのMSWらが声を揃えたのは、精神科の外来受診は現状、どこも予約でいっぱいであり、1カ月〜半年先まで埋まっているということだった。 塩路氏は「ご家族が、もうちょっと様子を見よう、まだ大丈夫だろうと思っている間にも症状は進み、本格的に介護が必要になる頃には間に合わない。異変に気づいたら早めに受診をしてほしい」と話した。
またディスカッションでは、家族介護者の抑うつ状態による介護の限界も話し合われた。病院によっては、本人だけでなく家族自身も「患者」としてグループ療法に参加し、「家族だから頑張らなければ」といった知症介護による独特の負担感を軽減する方法をとっているという。
公開講座の最後に、東京武蔵野病院の川合聡氏は、「精神科病院は一般の病院よりも知る機会が少ないので『閉鎖的で怖いところ』とのイメージがある。認知症介護を支える社会資源の1つとして、ケアマネジャーさんたちは病院の質をよくアセスメントして活用していただければ」と期待を語った。