社団法人シルバーサービス振興会は、2月10日、千葉県在宅サービス事業者協議会との共催で、公開シンポジウム「地域で支える高齢者の暮らしと安心」を千葉市で開催した。
当日は最初に、厚生労働省老健局振興課長の川又竹男氏による基調講演「介護保険の現状と課題」(地域包括ケアを中心として)が行われ、川又氏は、国の政策として取り組んでいる地域包括ケアについて詳細に述べた。
地域包括ケアとは、日常生活圏域(おおむね30分でかけつけられる圏域)で、介護・医療・予防・住まい・生活支援への取組みが包括的、かつ継続的に行われることを指す。
中でも医療・介護が必要となっても住み慣れた地域の在宅で暮らし続けたいと願う高齢者のニーズに応えるための「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス事業」については、2011年度予算(案)12億円を計上。全国60市区町村でモデル事業を展開し、望まれるサービス提供が可能かどうかを試算する。
また、24時間地域巡回型訪問サービスの基本コンセプトとして、以下の5点を掲げている。
1)継続的アセスメントを前提としたサービス
2)24時間の対応
3)短時間ケアの提供
4)「随時の対応」を加えた「安心」サービス
5)介護サービスと看護サービスの一体的提供
特に5)については、小規模多機能型居宅介護と訪問看護など、複数の居宅サービスや地域密着型サービスを組み合わせて提供する複合型事業を創設する、としている。これにより利用者はニーズに応じて柔軟なサービスを受けられるようになる。事業者にとっても、柔軟な人員配置が可能になる、ケアの体制が構築しやすくなるという利点がある、と川又氏は述べた。
後半は、自治体、地域包括支援センター、高齢者代表、民間事業者2社(高齢者住宅、物販)をパネリストに迎えてのパネルディスカッションが行われた。
株式会社セブン-イレブン・ジャパン品質管理本部の青山誠一氏は、同社のお食事配達サービス「セブンミール」の例を挙げ、全国で小売店が減少し、高齢者の「買物難民」が社会問題となるなか、地域に根ざしたコンビニエンスストアも本格的にシニア対応の品揃えやサービスに取り組む旨を述べた。
また、首都圏で有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅を展開する株式会社マザアスの吉田肇氏は、国土交通省の「高齢者生活支援モデル事業」に採択された緊急通報サービス(7社連携)を基本にした見守りシステム、家事代行、リフォームなど10の高齢者生活支援サービス(インフォーマルサービス)について、その受け入れ体制などを説明した。
さらに千葉市の地域福祉計画や、勝浦市の地域包括支援センターが作成した「勝浦いろは帖」(配達可能な商店や、送迎可能な理美容室のリストなどが掲載されている)など、高齢者の生活を支える施策が紹介された。
高齢者代表として参加した中間市老人クラブ連合会の東悦子氏は、民間企業が単独で得意分野だけをサービスしていくのではなく、各社がパートナーシップを結び連携したサービス体制を築くべきとし、そのためには行政は民間に門戸を閉ざすべきではなく、自治体広報誌などにもこうした民間サービスの案内を紹介できるようになればいいと、利用者視点から意見を述べた。