厚生労働省は2月7日、社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、同省では初となる区分支給限度額に関する調査結果を公表した。本調査は全国の保険者(市町村)から2010年3月分の支給限度額超過者と限度額の7〜9割程度のサービス利用者について、要支援・要介護度別に1人ずつ抽出したもの。
介護給付費明細書による利用状況や担当ケアマネジャーへのアンケートをもとに集計し、支給限度額超過者は4,752人、限度額の7〜9割の利用者7,978人の計12,730人について分析した。
その結果、区分支給限度額の超過者、限度額の7〜9割の利用者ともに2種類以下のサービス利用が8割以上を占めていた。限度額超過者・限度額の7〜9割の利用者が利用しているサービスの種類を見ると、「訪問介護」「通所介護」「短期入所サービス」など見守りを必要とする介護系サービスが多く、訪問看護や通所リハビリテーションやといった医療系サービスの利用が少なかった。
【担当ケアマネジャーへのアンケート調査結果】
区分支給限度超過者、限度額の7〜9割の利用者を担当する介護支援専門員へのアンケート調査結果によると、訪問介護サービスでは身体介護に比べ、掃除・洗濯・調理など生活援助の利用が多く、特に要介護度が軽い利用者で生活援助が多く利用されている傾向が見られた。
利用者の日常生活の状況については、「薬の管理が必要」、「見守りが必要」、「歩行が困難」、「おむつを使用している」の割合が高かった一方、「胃ろう・経管栄養の管理」、「ドレーン・カテーテルの交換・管理が必要」、「かく痰吸引が必要」など、医療的なケアを利用する人の割合は少なく、区分支給限度額を超える直接の要因となっていないとされた。
区分支給限度額を超えたケアプランを作成した理由は、多い順に「家族等で介護が補えない」77.5%、「利用者本人や家族からの強い要望がある」47.7%、「利用者の認知症が進行しており、多くのサービスが必要」38.2%、「利用者の状態像から判断して、多くのサービスが必要」36.7%となった。また「経済的に余裕があり、自己負担を気にしないため」は24.3%だった。
調査結果について、池田省三委員(龍谷大教授)は、限度額超過者・限度額の7〜9割の利用者が利用している大半のサービス種類が2種類以下となった結果について、「ケアマネジャーは、サービスの組み合わせを考えておらず、家族の言いなりになっている。ニーズとデマンド(要求)の区別がついていない」と強い口調で批判した。
井部俊子委員(日本看護協会副会長)は、「訪問介護サービスで生活援助にかなりの割合を占めているのは調査結果として1つの事実であるが、ケアマネジャーの資質が原因だけではない。生活援助を必要とする独居高齢者などは、訪問看護を受けたくても受けられないのが現状。居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護ステーションによるケアプラン共同作成など、医療依存度の高い高齢者支援を含めた検討をしてはどうか」と提案した。
齊藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会理事事務局長)は、「軽度者への生活援助サービスが多い結果となっているが、重度者に生活援助が不要なわけではない。重度になると生活援助どころではなく、生活援助を削ってまでも身体ケアを優先せざるを得ないという背景も読みとるべき」と訴えた。
――社保審レポート2へ続く