東京都は、高齢者が住み慣れた住宅・地域でできる限り生活を継続することを支援するため、集合住宅の管理人などを対象に「平成22年度高齢者住宅支援員研修会」を1月28日に開催した。都内における65歳以上の高齢者は、総人口の20.3%(2010年1月現在)となっているが、わずか4年後の2015年には24.2%まで高齢化が急速に進むという東京都の現状を背景に、東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課長の室井豊氏が「高齢者住宅支援員の業務理解及び社会資源の知識と連携」をテーマに講演した。
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室井氏は「高齢になっても認知症になっても、誰もが自分の人生は自分で決め、周囲から自分の意思を尊重されたい、社会とつながっていたい、という尊厳ある暮らしを望んでいるものの、加齢などにより自己決定が難しくなったり、人や社会とのつながりが希薄になる」と述べて、高齢者支援の必要性を訴えた。また、共同住宅で起きている、起こりえることとして以下の10項目を示し、地域のトラブルの現状を一例として示した。
[color=003399]【共同住宅で起きている、起こりえること】[/color]
1.ごみの分別ができない
2.共有スペースの掃除当番を忘れる
3.自分の部屋が分からない
4.管理人に買い物等の用事を頼む
5.漏水や火災の要因になりそうなトラブル発生
6.大声で叫ぶ
7.居室内がごみ屋敷化しているようだ
8.殆ど外出しているように見えない、最近顔を見かけなくなった
9.住民同士の交流が乏しく、生活状況が分からない
(孤立しがちな高齢者、気配が分からないことも)
10.遠方に住んでいる身内の連絡先が分からないなど
こうした問題を抱えた高齢者が自宅で住み続けるための対策として、室井氏は「まず地域包括支援センターに大変な状況になっている人がいると相談して」と呼びかけ、地域に存在する資源とネットワークの活用を説いた。また、共同住宅の管理を担う管理人や管理組合の代表者としては、修繕などのハード面や家賃・入退去管理など“住宅整備”に目が行きやすいが、今後求められるのは、居住者間の良好な関係の確保するためのコミュニティの形成など“ソフト面の対応”が重要であると指摘した。
また地域包括支援センターの活用を訴える一方で、都内の地域包括支援センターは2010年10月1日現在で364カ所とおおよそ人口3万人に1カ所くらいの割合で設置されているものの、人手不足などから同センター側も地域の高齢者の情報を欲していると課題を打ち明け、地域住民としての協力を受講者らに要請した。さらに、地域包括支援センターの職員には守秘義務(介護保険法第115条の45第5項)があるので、安心して相談できることも告げられた。
室井氏は、自分の担当する共同住宅や居住する共同住宅を管轄する地域包括支援センターや地元民生委員を調べておくこと、まずは挨拶や声かけをすることなど、「できることから始めてください」と地域での関係づくりに努めるよう求めた。
■取材協力
財団法人 高齢者住宅財団
◎研修会レポート3へ続く