東京都は、都立病院などの医療現場において職員らが業務改善に取り組む「テーマ別改善運動」の2011年度発表会を1月27日に開催した。サークル活動に取り組んだ191ものグループから患者サービスの向上や経営の効率化を目指した優秀な発表が選ばれ、その中でも医療の枠にとどまらず、介護の現場でも活用できる有益な実践例を紹介する。
「こんなの欲しかった!らくらく検査着」をテーマに、着やすい検査着の作成過程を発表したのは、都立大塚病院のサークル“えびちゃんず”の一員、海老澤香代氏。同院の診療放射線科では、X線撮影時、肩の痛み・麻痺・点滴をしているなどの患者が、既存の検査着では更衣がしづらく、更衣を介助することにより検査時間も長くなっていることが課題に挙がった。
従来の検査着の問題点を分析してみると、点滴をしている患者は袖を通す動作が必要なため、頭からかぶるタイプ以外に、前開きするガウンタイプでも更衣しづらかった。また女性患者の場合は、ブラジャーなど下着の金属がX線撮影の障害となるので外すよう求められることが多いが、検査着を頭からかぶった後に衣服の下で下着をはずす動作が不便で、同性ばかりの撮影室内であっても上半身の裸体を他人の目にさらさなければ更衣できない現状があり、女性患者の羞恥心にも配慮が求められた。
そこで使用しなくなった検査着を使って、頭からかぶった後に全開した脇の部分をひもで結ぶ試作品を作成。患者や介助者である家族や職員を対象にアンケート調査を行った。その結果、脇の部分をひもで結ぶのが大変でマジックテープの方が良いなどの改良点が浮かび上がった。
完成した検査着は、頭からかぶった後、全開した脇の部分を左右から前に回しこむ“後ろ見頃”を付属させ、正面のマジックテープで留める設計になった。これならば「頭からかぶる」「左右の見ごろを交互にとめる」という3ステップの手順だけで簡単に着ることができる。会場では試着したスタッフの登場とともに、わずか15秒で着れる様子がビデオで映し出された。
「らくらく検査着」の特長として、腕を袖に通さずに更衣ができ、患者がつかみやすいように持ち手つきのマジックテープになっている、着用後に下着が外せ、見頃で包むことで両脇が見えずに安心といったメリットが挙げられた。
その後のアンケート結果でも「認知症があるので簡単な検査着で助かった(家族より)」「点滴をしながらでもこの検査着なら着替えやすかった」「肩が痛くて上がらないが、とても便利」と患者らに好評だった。
海老澤氏は、「同院だけでなく他施設でも使用可能で需要があると思うので院外にも紹介していきたい」と述べ、会場からは大きな拍手が送られた。
■取材協力
東京都病院経営本部サービス推進部患者サービス課