1月28日、地域医療の全国的な連携に向けて、関係機関が協力しあう「地域医療福祉情報連携協議会(RHW)」発足記念シンポジウムが都内の大学で開催された。
これまで、日本の医療は病院完結医療が続いてきたが、現在の地域医療の崩壊や、医療を取り巻く危機を考えると、1病院で患者をケアするのはもはや不可能な状況。今後は、地域完結型医療として、介護や健康・保険・福祉と連携した地域包括ケアを実現する体制が求められている。
そこで同協議会は、地域の健康・医療・介護・福祉の情報連携の実施形態や健康医療情報基盤の実現に向けて相互に探求する場として、全国各地で地域医療情報連携を積極的に行っている医師が発起人となり設立された。
当日は中央行政(内閣官房、総務省、厚生労働省、経済産業省)から発足を祝うスピーチが行われたほか、同協議会会長の田中博氏(東京医科歯科大学大学院生命情報科学教育部教授)による設立趣旨説明がなされた。
それによると、日本は世界に類をみない医療皆保険制度の成功例といわれるが、そのシステムも膨れ上がる医療費、病院の経営状況悪化(70%の病院が赤字だという)、高齢化、糖尿病など生活習慣病の増大などで危機的状況に瀕しているという。
なかでも日本の人工透析患者29万人は世界一で、透析患者には月額40万円、年間500万円の医療費がかかるが、個人負担は月額2万円程度。糖尿病から透析へ移行する患者も多く(糖尿病性腎症)、医療保険破綻危機の一因にもなっている。
これまでの医療は、その患者の生活歴、既往歴などが加味されない「病院完結型医療」だったゆえにこのような事態を招いたとも言え、地域と連携し、糖尿病の発症前からの予防や、病院から家庭での療養と、一連の情報連携が可能な「地域完結型医療」は急務とも言える。
その人の病歴、これまでにかかった病院、飲んでいた薬など、誕生以来の履歴をすべてデータに残し、一括して追うことができれば、転勤などで居住地が変わったり、結婚などで苗字が変わっても、適切な「生涯を通じたケア」が可能になる。そのためには、現状の母子手帳のような「紙による管理」から、「データによる管理」に統一する必要があるのだ。
しかし、そのためには通信、システムなど一連のIT基盤の整備が必要であり、そのためには膨大な時間と費用がかかる。今回の発足記念シンポジウムでは、その後、これまで地域医療に貢献してきた地域の事例が11発表された。こうした成功例を参考に、同協議会は、今後、より大掛かりな連携のために話し合う場の足がかりとなろう。