正露丸で知られる大幸薬品株式会社は、木(もく)クレオソートもしくは木クレオソートを有効成分とする組成物(正露丸など)の胃アニサキス症の予防・症状改善のための薬剤としての活用方法を特許出願したと、2010年12月に発表した。
また、木クレオソートをあらかじめ予防的に服用(食事中あるいは食後に服用)しておくことによりアニサキスが寄生する魚介類を生食しても、胃アニサキス症の症状が軽減されたり発症を抑えることが期待できる。なお、摘出術を施行する場合も、前処置剤として服用することでアニサキスの運動が抑制され、内視鏡による摘出(内視鏡検査をおこなって内視鏡下に鉗子で摘出)が容易となる。
アニサキス症とは、アニサキスの幼虫が寄生する魚介類(サケ、サバ、アジ、イカ、タラなど)を生で食べた時に、幼虫が胃壁や腸壁に侵入して激しい腹痛をおこす、わが国でも多くみられる寄生虫症。正確な症例数を確認することは難しいが、日本国内でも1 年間に少なくとも2,000〜3,000 件のアニサキス症が発症しているとする報告もあり、主に胃で発生するとされている。
アニサキス症の対処法は、消化管粘膜上の虫体を確認したうえで鉗子を用いてアニサキスを摘出(内視鏡検査をおこなって内視鏡下に鉗子で摘出)するしかなく、アニサキスに特異的で、かつ効果的な治療薬(薬剤)は今のところ存在していないと言われている。
正露丸の主成分である木クレオソートは、ブナやマツなどの原木を乾留して得られる木タールを精製した淡黄色透明の液体。グアヤコール、クレオソール、フェノールなどのフェノール系の化合物を含む生薬で、主に医薬品として使用されている。
今回の出願の内容は、魚介類を生食後に激しい腹痛や嘔吐を伴う消化器症状が発症し、胃アニサキス症の発症が懸念される場合、木クレオソートもしくは一般家庭の常備薬である木クレオソートを有効成分とする組成物(例えば正露丸)を服用することで、原因となるアニサキスの運動を抑制すると共に、当該症状を軽減・消失させることが期待できるというもの。多くの家庭で長い間常備薬として支持されてきた「正露丸」に将来、新たな効能が加わるかもしれない。