東北有数の温泉地、飯坂温泉で、廃業した温泉旅館を高齢者専用賃貸住宅(高専賃)に生まれ変わらせるプロジェクトが10月より進められている。温泉を有する福島市では、高齢化率が約21%と高齢化の進展も著しく、高齢者の新たな住居確保と新しい街づくりを目指して廃業旅館の活用に着手した。
廃業した旅館2件の土地と建物を取得し、実際に運営にあたるのは、同市内の社会福祉法人「とやの福祉会」。2012年に高専賃60戸を開業する予定だ。とやの福祉会は、福島県内で特別養護老人ホームなどを運営する一方、保育所運営も手掛けており、新設する高専賃にも定員20名の学童保育所を併設する。
とやの福祉会は、国土交通省が募集した「高齢者等居住安定化推進事業」の補助対象に選ばれ、総事業費約5億1,000万円のうち、約1億6,000万円が補助される。
奥州の3名湯といわれる飯坂温泉だが、25年以上前にピークを迎えた客足は現在、往時の半分以下にまで減少し、ヘレン・ケラーや昭和天皇などが宿泊する名旅館も廃業の憂き目にあうなど、観光客離れに歯止めがかからない。地元では廃業した旅館が30件近く放置されていることが問題視されていた。
◎福島市