90名のノロ感染から学んだ対策――都福祉学会レポート1

東京都は12月17日、都内で「東京都福祉保健医療学会」を開催した。福祉をはじめ、医学・医療看護、保健衛生の各分野において日頃の研究成果や取り組みを発表し、行政サービスに活かそうという趣旨の本学会は、今年で6回目を迎えた。終日にわたって口頭発表、ポスターセッション合わせて80題もの事例が、福祉医療関係者から報告された。

介護保険施設における感染拡大防止の取り組み」について発表したのは、板橋ナーシングホームの感染対策委員・管悦子氏。介護老人保健施設特別養護老人ホームを併設する同施設は、一部を利用してショートステイや、通所リハビリテーションのサービスを提供している。2006年の年末年始、延べ90名の入所者(職員も含む)にノロウイルスによる大規模な院内感染が発生し、感染による嘔吐誤嚥性肺炎を引き起こすなど入所者が重度化するなど、深刻な被害が生じた。

管氏は、「このとき、すでに所内には感染症委員会が設置されていたにもかかわらず、転入職員や新卒職員に対し感染症予防対策が資料配布にとどまっていた」と他施設にもありがちな“名目だけの委員会”を振り返った。

猛省した感染症委員会は、その機能が発揮されるよう、毎月定例的に感染症委員会を開催。その後、東京都健康長寿医療センターの感染症管理認定看護師を迎えた講習会などを開催し全職員が受講必須とし、手洗いの基本や嘔吐物処理の仕方を学んだ。作成した感染症予防マニュアルは毎年改訂し、施設内感染症発生時の運絡網や家族などへの報告の義務化を図り、速やかに対応できる体制の整備を進めた。

また、2006年のノロウイルスが感染拡大時、嘔吐物処理などで慌てて布製のエプロンを使い捨てにしたり、使い捨てのディスポ手袋が不足するなど、必要な時に感染症対策上の必要な物品が手元に無かったことが感染拡大の要因の一つになった反省から、保健所で嘔吐物処理用に七つ道具を教えてもらい、感染症委員会でそれを参考に同施設オリジナルの予防道具セットを作った。

さらに休日・夜間帯でも、すぐに供給できるよう感染症予防グッズを大量に備蓄する備蓄庫を整備をし、実際に各フロアへ配備して職員がいつでもすぐに使用できるよう、サージカルマスク、塩素系消毒剤、アルコール消毒剤、ディスポ手袋などが完備されたワゴンも会場で披露された。

そのほか、感染症発生時に冷静な対応が重要であることから、施設外での感染症発生動向についてもニュースを紹介するなど、講習会などで最新の情報や知識を職員に伝達していることも報告された。

管氏は、ノロウイルスの大規模院内感染から4年、これまでの取り組みを振り返り、「毎年インフルエンザノロウイルスが散発的に発症するものの、大規模な院内感染に拡大することなく今日に至っている」と述べ、感染症の拡大防止は、手洗いの徹底など日頃から地道な予防対策と職員一人ひとりの危機意識の醸成が重要なポイントである」と語った。

◎東京都福祉医療保健学会レポート2へ続く

■取材協力
東京都福祉保健局

■無料書式
東京都「院内感染マニュアル(2010年度)」

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