社会福祉法人全国社会福祉協議会 日本福祉施設士会が12月8日、9日の2日間にわたり開催した「福祉QC全国発表大会」では、施設における業務改善の事例発表に交じって居宅介護支援事業関連の取り組みが報告された。
「ケアマネジメントにおける4つの書類の遅れ件数をゼロにしよう」をテーマに活動報告を行ったのは、“青森県むつ市地域包括支援センターみちのく”の主任介護支援専門員、加藤文丈氏。主任ケアマネの加藤氏のほか、社会福祉士、看護師、事務員の4名で構成したチームが書類作成の効率化に挑戦した経緯を語った。
2008年度に同センターが受けた総合相談業務の延べ件数は月平均164件、予防給付件数が83件。そのうち新規・更新の書類作成が20件あり、3名の職員で月平均6〜7件のケアマネジメント書類作成を担当している。また、地域活動のための外出や介護教室の開催なども並行して多忙を極める中、自分のケアマネジメント書類の作成が遅れ、「月末が近づくにつれ、ストレスを感じている」現状を打開しようと業務改善のテーマに選定した。
ケアマネジメント書類のうち「評価」「利用者基本情報」「介護予防サービス・支援計画原案」「サービス担当者会議」の4つについて、各職員が利用者ごとに作成した期間を調べた。すると「評価」と「サービス担当者会議」の書類が作成までに1週間かかり、他の書類より作成日数が長いことがわかった。
一方で文書量が多い「介護予防サービス・支援計画原案」は、他の書類の倍近い長時間が費やされているものの、日数ではわずか3日間だった。この結果から、事業所など外部への提出書類とセンター内の保管にとどまっている書類では作成日数にが長いことが判明した。
また、月末までに4つの書類が全て作成できず、翌月に持ち越した利用者は約半数に上った。
要因では「文章を考えながらパソコンに入力するため時間がかかり、まとまった時間がとれない」「業務の優先順位を考えると“記録”を後回しにしてしまい、期日内に終わらせるという意識が薄い」「面談時に聴取した必要な情報をピンポイントで記録していない」などがあげられた。
そこで4つの書類作成を月末までに終わらせることを目標に設定し、以下の対策を立てた。
●毎月、月末までに翌月の書類計画を立てる。
●生活機能評価の利用者チェックリストをもとに独自のアセスメント票を作成。
●各担当者が訪問日から5日以内に各書類を作成。
●4つの書類ごとに30分の記録時間を計画。
●パソコンの定型文を対策実施前の10月10日頃に見直す。
(運動・生活・健康などアセスメント項目ごとに並べ替えて整理)
●毎日の朝礼で本日の計画を発表。
また、紙面での計画の実行性を“見える化”するため、当初は利用者が使う投薬カレンダーを使用してみたが、カードが重なると見えづらいなど試行錯誤を重ね、看護師が病院で使用する24時間処置ボックスを参考に「1カ月カレンダーボックス」を考案。誰のカードか一目でわかるように担当者ごとにカードを色分けし顔写真も入れた。
このカードを毎日の朝礼で手にとって予定を読み上げ、書類作成終了後にはカードをボックスから抜き取るようにした。月末までにボックスがカラになるように心掛けた。これらの取り組みの結果、4つの書類すべてにおいて作成時間が短縮できた。
加藤氏は終わりに、こうした取り組みの結果、単に書類作成の時間が短縮しただけでなく、アセスメントをしっかりとるようになり、利用者ニーズを発見できたことや、再アセスメントによって利用者の認知症に気づいたなど、多角的に効果があったことを告げた。
なお、“みちのく”の作成した「独自アセスメント票」は後日、CMOの【無料書式】にて公開予定。
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