塩野義製薬と日本イーライリリーが共同で運営する「うつの痛み」情報センターは、うつ病の際に発生する身体的な痛みと精神症状の影響の実態調査をまとめた。この調査は、うつ病に伴う身体症状としての「痛み」の実態を明らかにするため、うつ病の患者と医師を対象として行ったもの。
うつ病は、抑うつ気分、不安、興味の喪失といった精神症状のほかに、睡眠障害などの身体症状が見られることは一般的に知られているが、肩、胃、首などに「痛み」を伴う身体症状については、あまり知られていない。うつ病の患者であっても、「痛み」がうつ病の症状であると気づかない人が多く、そのつらい症状を医師に話していないために、治療に結びついていないのが現状。
WHOは、2020年にはうつ病が虚血性心疾患に次いで健康な日常生活を障害する疾患の2番目に大きな要因になると予測している。そのため、疾患についての正しい理解を広め、うつ病の早期発見・早期治療、及び適切な治療に結びつけることが必要だと言われている。
調査結果によると、過去5年以内にうつ病と診断され、現在うつ病治療薬を服用しており、かつ、がん、関節リウマチ、痛風の治療薬を服用していないうつ病患者(本調査663例)および、うつ病、うつ状態の患者を1カ月に20人以上診療している精神科・心療内科医師とうつ病、うつ状態の患者を1カ月に5人以上診療している一般内科医師(本調査:456例)を対象に実施したところ、患者、医師ともに「痛み」の症状は精神症状やうつ病の回復に影響を及ぼすと考えていることが明らかになった。
一方、うつ病に伴う多様な症状のうち、「痛み」は精神症状や睡眠障害に比べ診療の場で話されていない傾向にあり、「痛み」の症状を話していない患者は、話している患者よりも治療満足度が低いことがわかった。また、大半の医師が、患者に「痛み」の症状について話してもらうことで、うつ病の治療効果が上がると認識していることなどが明らかになった。
【主な結果】
■治療への影響:
・72.1%の患者がうつ病の痛みが精神症状に影響すると感じており、医師も83.2%が同意
・「うつの痛み」がうつ病の回復を妨げると感じる患者は68.6%
■患者の認識:
・患者の6割が「痛み」を経験し、「痛み」の特徴は「頭」「肩」「胃」が多く、8割が「鈍い」痛み
・「痛み」は診療の場で「話されていない傾向」にあり、話していない理由として69.2%の患者さんが、痛みが「うつ病の症状だと思わなかったから」と回答
・治療満足度は、「痛み」の症状を主治医に話している人よりも話していない人が低い
■医師の認識:
・医師の64.7%が「患者さんがうつ病の痛みを話すことでうつ病の治療効果が上がる」と認識
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