胃ろうの功罪、なぜ無駄な抵抗をするのか――ケアマネ研修会レポ1

口から食べられなくなったときに栄養摂取の手段としてとられる「胃ろう」の意味、適用の是非を考えるケアマネジャー研修会が、東京都介護支援専門員研究協議会主催で12月3日に都内で開催された。季節外れの暴風雨の朝にもかかわらず、350名もの参加者で会場は満席となり、胃ろうの持つ簡便さと終末期の延命のはざまに揺れるケアマネジャーの悩みが見えてくるような気がした。

研修会の講師を務めたのは、特別養護老人ホーム芦花ホーム(世田谷区)医師である石飛幸三氏。75歳、自らも後期高齢者という石飛氏は、この日も朝5時に入所者の見回りをして会場に来たと打ち明けたが、そのタフさを感じさせない穏やかな口調で講演を始めた。

現在、胃ろうの人は全国に40万人いて、本人や家族の60%が施設での最期を望んでいるが実際には病院で最期を迎えている人が80%に上るという。

石飛氏が芦花ホームに赴任したのは2005年。ホーム開設時のバブル景気は影をひそめ、100名の入所者に対し常勤の看護師は3名いう追い込まれた状況で、入所者の平均年齢は90歳、認知症の人が9割を占めていた。
終末期を迎えた高齢者誤嚥性肺炎によって病院に送られると、さかんに胃ろうを作られ、次第に老衰していく体に同じ量の経管栄養を入れ続けるために「あふれる」状態だった。経管栄養が過多になると、たんも多くなり吸引がひんぱんに行われ、看護師らの負担も大きかった。

石飛氏は「厚生労働省の会議でも、たんの吸引など介護職の医行為解禁が検討されているが、たんの吸引をしなくていい状態にすることが先決」と述べ、「健康な私たちなら“今日は食べる気分ではない”とか“食べ過ぎたから量を調節しよう”などと様々なことを考えるが、胃ろうの人は自分で量を加減できない」と述べ、本人の意思に関係なく過剰な栄養摂取がまん延する現場を直視するよう呼びかけた。

石飛氏によると終末期が近付くと1,000カロリー摂取していた人でも800、600、400と必要なカロリーも少なくなり、一日平均で700カロリー程度になると「あふれた」状態の肺炎も起きにくくなるという。通常の食事をとる入所者にも“あともう一口”を控え、食べさせすぎないようにし、経管栄養の人にはこうしたカロリーダウンをするようホーム職員に指示したところ、当初は世間や家族への配慮から反発されたが、2005年の赴任から取り組み2年後には「無理に食べさせない」ことがホーム内に定着し、肺炎死が大幅に減少した。

温和な語り口だった石飛氏が語気を強めたのは、食べられなくなった高齢者が病院に送られると呼吸器科の医師が肺炎を治し、次の工程として消化器科が胃ろうを作るという“流れ作業”の実態を語ったとき。同じ医師としての自戒をこめて「その人がその後の生活でどうなるのか、自分が何をしているのか、しっかりと考える必要がある。病気と老衰は違うのに混同している」と医療現場への警鐘を鳴らした。

そのうえで石飛氏は「よく“諦めてはいけない”というが、命の火が消えるという当たり前のことになぜ、無駄な抵抗をしようとするのか」と会場に語りかけ、「私たちは何を求めて終末期の高齢者に胃ろうを作るのか、意味合いと管理の責任を今一度じっくり考えてみる必要がある」と、ケアマネジャーらに胃ろうの持つ功罪に対する深い思慮を求めた。

◎胃ろうの同意、医師2人を前にノーと言えない雰囲気――ケアマネ研修会レポート2へ続く

■取材協力
東京都介護支援専門員研究協議会

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