11月28日、東京都港区で「遠距離介護準備セミナー」と題した、現役介護および予備軍向けの催しが開催された。
主催はNPO法人パオッコ(離れて暮らす親のケアを考える会)と住友生命社会福祉事業団。大阪セミナーは7日、精神科医の香山リカ氏を特別講演に迎えて好評裡に終了し、今回の東京セミナーでは『おひとりさまの老後』でおなじみ上野千鶴子氏が登壇した。
自身も遠距離介護経験者でありつつ「年齢はそろそろ要介護世代」と話した上野氏は1948年生まれ。講演では家族のみ依存する生き方、夫婦親子間の新しいコミュニケーションのあり方を説き、ケアマネジメントの概念を一歩進めた「トータルライフマネージメント」について提唱した。
会場との質疑では、同世代の男性や家族介護経験者にアドバイスを行い、血縁だけでなく地域で支援を行うための仕組みづくりに言及した。
本セミナーの名物企画である、体験者と専門家によるパネルディスカッションには今回、15年キャリアをもち、介護事業所を経営するケアマネジャーの岩澤純氏が登壇。東京・島根間で遠距離介護を経験した桶谷浩氏(社会保険労務士)、祖母の介護経験をもとに新しい介護支援を模索する竹本美恵子氏(行政書士)を交え、お金や施設介護といった切実な課題について意見交換した。
このなかで岩澤氏は居宅ケアマネの立場から、地域包括支援センターの役割について再認識を促し、急変時にすぐ駆けつけられない子世代に代わる助っ人として、親の在住地の地域包括支援センターの連絡先を入手しておくことなどを勧めた。
200名満場の参加者の多くは、比較的若い働き盛り世代。シングル介護者や夫婦での参加も目立った。パオッコ理事長の太田差恵子氏は「今は、誰もが自分の生活設計にゆとりを持ちにくい時代。介護が長期化することを考え、親のことだけでなく自分たちの老後も視野に入れて」と呼びかけた。
パオッコでは来年度も同様のセミナーを東京・大阪で企画していく。
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