居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で、ICTを使った電子データによる情報の連携を促すため、厚生労働省は2020年に、クラウドを活用した情報連携の費用対効果などに関する実証研究を行う方針だ。同省では、介護現場のニーズを把握する調査も併せて行い、全国展開に向けた方策を検討する。19年度の補正予算案に、事業費として7千万円を計上した。
事業所間で異なるメーカーの介護ソフトを使用していると、電子データの交換がうまくできないことがある。このため同省は昨年、ケアプランの電子データをやり取りする際の共通項目などを定めた「ケアプラン標準仕様」を作成し、現在、普及に向けた取り組みを進めている。
政府がこのほど策定した社会保障改革などの新たな工程表(期間は20~22年度)でも、「標準仕様に基づくシステムの導入の支援」が明記されており、今回の実証研究は、標準仕様の普及が念頭にあるとみられる。
■標準仕様の補助金、上限額を引き上げへ
同省はまた、標準仕様に準拠した介護ソフトの購入費用に関する補助金について、現在30万円となっている上限額を引き上げ、事業所の規模に応じて50~130万円に増やす方針だ。20年度の当初予算案に、介護現場の労働環境の改善などの費用として82億円が盛り込まれた=図=。
現在、導入する機器の購入額が60万円未満の場合に2分の1となっている補助率を、都道府県の裁量で自由に設定できるようにすることで、補助金の活用を促す。同省では、現行の「地域医療介護総合確保基金」の使途を弾力化し、23年度まで補助金の増額分を維持する見通し。
さらに、医療機関と介護サービス事業所との間で、入退院時以外でICTによる情報連携の必要性があるかどうかを調べるため、その費用として7千万円も計上。ケアマネジャーに関連する「入院時情報連携加算」や「退院・退所加算」など、現行の報酬体系では、主に入退院時の支援が対象となっており、今後の制度改正などに影響が出る可能性もある。
19年度補正予算案と20年度当初予算案は共に、年明けに始まる通常国会で審議された後、可決・成立する見通し。