特別養護老人ホーム(特養)の施設長有志でつくる「21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会」は、11月10日、「全国老人ホーム施設長アンケート」調査結果(速報)を発表した。
調査は、今年8月末から9月末にかけて、全国の特別養護老人ホームなどの施設長7005人を対象に郵送で実施し、1,638人(特養の施設長1,407人を含む)から回答が寄せられた。わずか1カ月という極めて短い期間だったにも関わらず、これだけの回答が寄せられたことに対して、同会では「関心の大きさを物語るとともに、福祉現場からの切実な思いがあったからに他ならない」とコメントしている。
質問項目は、介護の社会化、介護サービス、保険料、サービスの利用、要介護認定、特養整備、低所得者の入所、職員の給与、養護老人ホームの定員割れ、特養の運営主体、介護職への医療行為など、多岐にわたっている。
「介護サービスは受けやすくなったか?」の質問に対しては、「思う」人が約半数いるものの、「思わない」20%、「どちらともいえない」30%と、疑問を感じている人が半数にのぼった。これについて同会は、「所得の乏しい人や認定による区分支給限度額によって、決して全ての利用者がサービスを受けやすくなったものではない」「最も福祉サービスを必要としている方の期待から外れる現実は、“介護あって福祉なし”の状況といっても過言ではない」と分析。
「本当に受けたいサービスが受けられるかについては疑問が残る。また、利用者の権利意識については、むしろ家族の権利意識が強くなったように思うが、一方的な或いは過剰な意識となりつつあるように思う」「ケアマネジャーの資質によりサービス内容に差がある。利用に対する考え方、受け止め方によって、本人の気持ちとずれがあるように思う。利用者よりも家族・ケアマネジャー等の都合でサービスが組まれている」といった生の声が寄せられている。
実際、負担によってサービス利用を制限している人についての回答では、「たくさんいる」14%と、「少ないがいる」53%を合わせると7割近くにもなってしまっていた。
また、医療行為についての質問では、現実に医療行為を行っている施設が62%、1,020施設あり、その内容は、吸引が851施設と圧倒的に多く、続いて経管栄養464、服薬管理460、摘便262の順。経管栄養対象者が増えて、入所制限せざるを得ない施設もあるという。
介護職への医療行為解禁については、「条件つき」「基本的に」を合わせて約9割が賛成の方向で回答を寄せた。その条件とは、「知識・技術の習得などの環境整備」「法的整備」などで、これまで暗黙の了解のようにしなければならなかった行為を法的に認めることと、やるからにはスキルの習得が必要という考えが浮かび上がった。
「特養は医療提供の場ではなく、生活の場でありたいと思いますが、年々医療を必要とする方が増え、そういう方々をすぐに切り捨てられるわけはありません。(中略)特養の現実をもっと国は理解する姿勢を持ってほしいと強く思います」「現実に医療行為が必要な方々が入院を続けることができず、特養に入所してくることが多い」といった生の声が寄せられた。