11月11日、厚生労働省と全国社会福祉協議会が開催した「介護の日フォーラム」では、介護職員による事例発表会が行われ、全国62事業所・施設から「優れた取り組み」や「ユニークな取り組み」として選ばれた4事例が紹介された。うち、京都市の特別養護老人ホームが独自の工夫を凝らした学習療法で利用者の介護予防に効果があった事例を紹介する。
京都市修徳特別養護老人ホームに7年近く勤務する谷内裕樹氏は、「認知症の予防・改善のため“読み、書き、計算”などの学習療法に取り組んできたが、教材をホーム内の本棚や机に置いていても自ら手に取る利用者がおらず、職員が声かけして学習療法を実践するよう誘導していた」と、これまでの課題をあげた。
そこで、利用者の誰もが通る廊下(動線)の壁に漢字検定に出題される「難読漢字」や「世界の国旗」などをボードで掲示し、“見られる・触って答えられる”設置の仕方を工夫した。掲示物の高さは車いすでも手が届くよう配慮した。
その結果、利用者から「国旗・地図を見ていると、あきひん(飽きない)」と言われたり、国旗が会話のきっかけとなって他利用者と旅行話をするなど、利用者同士の交流が図れるようになった。
水槽内のカゴに1円玉を沈ませて大吉・小吉などを占う「水槽おみくじ」を置いたところ、「今日もいい事があるように」と、起床後の日課にする利用者もみられ、フロアのソファーで過ごすことが多かった利用者も教材を廊下に設置して以降、自ら車椅子で移動して長時間廊下での学習療法に取り組むようになった。
学習療法というと、とかく教材の内容に注目しがちだが、谷内氏は「教材の置き場所を廊下に移したことがきっかけになり、強要せずとも自然と利用者が興味を持ってくれた。身体機能の向上や意欲の促進に効果がみられた」と報告した。
このほか、介護職向けのミニセミナーも開催され、介護職のストレス対策についてヘルスカウンセラーの栗原知女氏が講義し、立ち見が出るほどの人気ぶりだった。
栗原氏は、厚生労働省のデータを引用して、ストレスの原因のトップが正社員、契約社員、パートを問わず“職場の人間関係”であると指摘。自分自身の気づきや職場内での相談・指導、カウンセラーや産業医、コンサルタントなど外部者による管理者教育などの必要性を訴えた。
また、うつ病の自己診断や、ストレスからみられる食生活の兆候などがわかるチェックリストを示し、「ストレス対策には早期発見と早期予防が重要」と重症化する前の初期対応の大切さを説いた。
フォーラム会場内では、10名程度の少人数で、入職のきっかけ・仕事内容・やりがいなどでざっくばらんに先輩職員に聞くコーナーや、就職面接会や職業相談ブースが設けられ、人材確保を切望する施設や事業所など70社あまりが出展ブースを並べて、来場者と熱心に話しこんでいた。
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