厚生労働省は23日、第8期介護保険事業計画(2021年度から23年度)に向け、制度改正などについて議論する社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所長)に、新たな論点を示した。論点では近い将来、介護への需要が急騰する都市部での介護施設やサービスの整備などが盛り込まれている。この日の議論では、施設の整備ばかりを急ごうとする姿勢を問題視する声が続出。深刻化している介護人材不足の解消こそが急務とする声が相次いだ。
厚労省は第8期介護保険事業計画や、団塊の世代が全て75歳以上になる25年を見据えた課題として、大都市圏で85歳以上の人が大きく増加する一方、介護施設の整備が十分に進んでいない点を指摘。その一方、大都市圏以外の地域では、85歳以上の高齢者はそれほど増加しない点も挙げた。
85歳以上の人では、介護や医療のニーズが急速に高まる。例えば、75歳から84歳の要介護認定率は19.5%だが、85歳以上では60.1%に跳ね上がる。さらに85歳以上の要介護認定者の約4割が要介護3以上であるなど、手厚い介護を必要とする人が多いのもこの世代の特徴だ。
こうした課題を踏まえ、厚労省は制度改正を見据えた論点として、主に次の項目を示した。
(1) 在宅サービス・施設サービス・居住系サービスや地域支援事業などを適切に組み合わせて整備するための方策
(2) 都市部における介護施設の整備の現状とサービスの受け皿整備
(3) 都市部以外でのサービス提供の在り方
(4) 医療との連携推進に向け、介護サービスに求められる役割
(5) 介護離職ゼロの実現に向けた、サービスの役割分担と基盤整備
この論点のうち、都市部における介護施設の整備に対しては、委員の間から「単に施設を整備しても人材が不足していては意味がない」とする意見が続出。また、特定入居者生活介護の指定を受けていないサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームまで含め、介護保険事業計画を策定できるようにすべきとの意見も出た。
(社会保障審議会介護保険部会)
(1)で示されたサービスの適切な組み合わせについては、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護など、既にあるサービスの拡充や機能強化が先決とする声が上がった。
■居宅介護支援「認定前から相談受け付ける体制を」-ケアマネ協会・濵田副会長
委員として出席した日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は、介護離職ゼロの実現に向けた取り組みとして、特定事業所加算を算定している居宅介護支援事業所などが要支援認定を受ける前の段階の人の相談を受ける体制を整えることを提案した。また、医療と介護の連携促進を実現する上での課題として「居宅介護支援と医療との間で、それぞれが求める情報に少し差がある」と指摘。その差を埋めるよう、それぞれの地域で検討する必要があると述べた。