「600時間研修は非現実的」と現場の声――厚労省人材会議レポート

厚生労働省は10月29日、第6回 「今後の介護人材養成のあり方に関する検討会」を開催し、より高い知識・技術をもつ介護福祉士の養成についてや、介護福祉士に至るまでのキャリアパスの在り方について話し合われた。

より高い知識・技術をもつ介護福祉士の養成については前回に引き続き議論がなされ、以下の3つの論点について、各委員からさまざまな意見が出された。

1)介護福祉士と比較した「より高い知識・技術」の育成の方向性(ジェネラリスト型かスペシャリスト型か)についてどのように考えるか。
2)「より高い知識・技術」をもつ介護福祉士が提供する介護サービスの質(アウトカム)や、チームケアにおいて担うべき役割をどのように考えるか。
3)上記2)を体現するために、「より高い知識・技術」をもつ介護福祉士は、どのような分野(テーマ)についての研修が必要か。また「より高い知識・技術」の認定方法や更新の必要性について、どのように考えるか。さらに、これらの仕組みを構築・運営していく上での職能団体の役割について、どのように考えるか。

討議に先立って、委員の一人であり、日本介護福祉士会会長の石橋真二氏より資料が提出された。職能団体である同会が2007年に制定した「日本介護福祉士会生涯研修制度」が示された。

ここでは根幹となる研修だけでも、「初任者研修」(資格取得後2年未満・21時間受講)、「ファーストステップ研修」(資格取得後2年以上・200時間受講)があり、ファーストステップ研修では的確な判断や対人理解に基づく「尊厳あるケア」の実践や小規模チームのリーダー、初任者等の指導係としての知識・技術・視点を学ぶ。具体的なカリキュラムも示され、この過程を経て、介護福祉士は、認知症や障害など分野別のスペシャリストである「専門介護福祉士」、後進の指導や研究者となる「研究介護福祉士」、施設長などをめざす「管理介護福祉士」の3つの道があり、それが今回議論のテーマとなる「スペシャリスト」「ジェネラリスト」に当たるのではないかとした。
しかし現状では、ファーストステップ研修の実施は同会の17支部と老施協など他団体9団体が実施しているのみ(2009年度実績)で、広く全国展開するまでには至っていない。

また、介護福祉士の行く先が「スペシャリスト」「ジェネラリスト」の二者択一という議論について、「ファーストステップ研修の内容がジェネラリスト養成と理解している」(因委員)、「個別ケア、チームケアでは内容が大きく異なるため、在宅と施設、障害者に分けるべき」(北村委員)、「資格を取った時点で在宅でも施設でも仕事ができるのだから、分けるべきではない」(石橋委員)など、委員によってその解釈が異なったため、事務局は「概念整理が必要」と、この話題を一旦引き取ることになった。

この議題ではさらに、他の類似国家資格の上級資格の例として、認定看護師の研修内容・研修時間・認定方法、さらに資格取得後の活動状況などが示された。また、社会福祉士は現在、「認定社会福祉士」および「認定専門社会福祉士」(いずれも仮称)制度を、2012年より試行予定だという。

続く議題、「介護福祉士に至るまでのキャリアパスの在り方について」では、介護福祉士をめざすための6月600時間研修(いわゆる介護職員基礎研修)について、その概要とカリキュラムなどが示されたが、今回は実際に介護福祉士を目指す介護職員5人に出席を願い、現場の意見を聴取した。

出席した5人は地域性も勤務する職場の形態もさまざまだったが、「費用はどこが負担するのか。自己負担は不可能」、「研修に出ている間の代替要員や給与保障はどうなるのか」、「プライベートな時間をすべて研修に費やさなければならないのか」、など5人ともが声をそろえて600時間を半年で受講するのは現実的でないと訴えた。なによりこれまでの実務経験をきちんと評価されないことに対する反発が大きかった。

また、現場の声として、「研修の内容がわからない」「そんなに受けなくてはならないなら社会福祉士になれなくてもいい」「現状の制度のままが望ましい」なども上がり、委員のなかからは、現場に(カリキュラムなどの)情報がまったく伝わっていないことにショックを受けたとの声も。

そして、「半年で600時間というのがそもそも誤解」「通信教育を含め1年〜3年で」「代替要員は確保してもらう」「研修はなるべく身近な地域で受講できるようにする」など、怒り心頭の現場をなだめるかのような柔軟な対応策が示された。

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