離島・へき地などでの医師不足解消の手段の一つとして、過疎地医療、訪問診療・検診・救急・災害時等で使用できるようにするモバイル医療情報通信システム「電子診療鞄」の開発研究を進めてきた東北大学は、10月18日より沖縄県の宮古島の診療所などで離島実証実験を開始した。
厚生労働省の調査結果「病院等における必要医師数実態調査の概況」(9月29日発表)にて、初めて明らかになったように、日本では医療資源配分の地域偏在が著しく、地域医療格差が大きな問題になっている。
「電子診療鞄」は、モバイル通信系により、いつでもどこでも医療情報を伝送することができる遠隔医療システムで、医師の代わりに看護師が持参して患者宅に赴き、病院や診療所にいる医師に患者の高画質映像および生体情報をオンラインで送ることにより、対面診療に近い環境を作るシステムで、コンセプトは次の4つ。
・訪問看護師が電子診療鞄を持参、在宅療養者の居宅を訪問
・在宅療養者の動画像データおよび生体情報を診療所にいる医師に伝送
・伝送された情報を用いて,医師が在宅療養者を診察
・必要に応じて医師は看護師に指示
モバイル通信で使用できることで、患者宅にインターネットアクセス環境がなくても携帯電話やPHSで患者データが伝送でき、さらに救急車で患者を搬送中であってもリアルタイムで患者の状態をモニタリングすることが可能となる。
離島環境では、移動に伴うコストや時間など地理的条件により医師の訪問診療が困難な場合が多いため、直接医師が患者宅に行かなくても、看護師が電子診療鞄を持参することで、患者の状態を高画質画像と各種生体情報から知ることができ、万一、病状が判断しがたい時などは、本土の基幹病院へ取得したデータを伝送し、専門医の意見を仰ぐこともできる。また、すぐ基幹病院に搬送する必要がある場合には、患者のリアルタイムデータを送ると共に、船舶やヘリコプターによる搬送の手配をすることも可能となり、時間の短縮にも大きく貢献できる。
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