厚生労働省はこのほど、介護サービス事業所の生産性の向上のためのガイドライン(GL)を策定した。現場の生産性を向上させることで、介護の質の向上や人材の定着・確保の実現を目指す。GLでは具体的な取り組みの手順や、成果があった好事例などが示された。
GLは、居宅サービスと施設、医療系サービスで、それぞれに設けられた。
GLでは、「業務を見直し、1人でも多くの利用者に質の高いケアを届ける」など、介護の価値を高める活動こそが、介護サービスの生産性の向上の取り組みであると定義。介護の価値を高めるためには、「人材育成」と「チームケアの質の向上」「情報共有の効率化」が必要とした。
そして「人材育成」や「チームケアの質の向上」「情報共有の効率化」を実現するための具体的な活動について、次の7項目に分けて提案。それぞれに改善実績があった好事例についても紹介している。
「職場環境の整備」
「業務の明確化と役割分担」
「手順書の作成」
「記録・報告様式の工夫」
「情報共有の工夫」
「OJTの仕組みづくり」
「理念・行動指針の徹底」
居宅サービスのGLの「業務の明確化と役割分担」では、業務を10分単位で記入する「業務時間調査票」などを用いて仕事の偏りや不要な作業がないかなどを分析し、新たな業務の流れを作ることが提案されている。居宅介護支援事業所の好事例としては「連絡方法をルール化したことで、電話対応の受信時間が減った」や「業務時間調査を行い、職員の間にあった業務の“ムラ”を省いたことで、これまで実現できなかった職員同士のミーティングを実施できた」などが紹介されている。
■人手不足に備えるためにも「生産性向上を」
GLが公表された11日の厚労省主催の「介護分野における生産性向上協議会」で基調講演した田中滋・埼玉県立大理事長は、介護保険が誕生して以降、1人の介護職員が対応している要介護者の数が変化していないなどのデータを提示。介護の現場の生産性は、制度が誕生してからあまり変わっていないとする見解を示した。その上で、今後も高齢者の数は増え続けることから「どこかの時期で介護の生産性を向上させないと、人手が足りなくなる」と指摘し、今回、示されたGLの必要性を強調した。
(生産性向上の必要性を強調した田中理事長)