在宅介護を行う際の留意点(食事・排泄・入浴など)

●食事

○誤嚥防止

高齢になると飲み込みにくくなり、食べ物が気管に入ってしまう「誤嚥」をたびたび引き起こします。気づかずに肺に入ると、常に高齢者の死因の上位にあげられる誤嚥性肺炎の原因となりますので、食事の形態や種類に注意しましょう。

飲み込みにくい食事

食事の形態 具体例
固いものや1片が大きいもの いか・たこなどは小さく刻みます。
繊維の多い野菜 ごぼうなど繊維の多い野菜は、繊維に直角に細かく切ります。
弾力性のあるもの お餅・団子・こんにゃく・かまぼこなども 喉につまりやすいので注意が必要です。
薄くひらひらして、
口の中に張り付きやすいもの
のり・わかめ・もなかの皮・ウエハースなどは、のどの奥や口蓋(こうがい・口の中の上壁)に張りついてしまい、最悪、気管の入り口を塞いで窒息する危険性があります。
まとまりにくいもの 小さくても、口の中でまとまらないと飲み込みにくいものです。刻み食も柔らかくないと、むせの原因になり ます。チャーハン等もご飯がパラパラしていて食べにくいことがあるので、「あんかけ」にするとよいでしょう。
パサパサしたもの おから、カステラ、クッキーやパンなどは口の中の水分を取られてしまうため、飲み込みにくい食品です。牛乳やスープと一緒にとるとよいでしょう。
粉状のもの きなこや青のりなどは、むせの原因になりやすく、ゴマやパン粉などの小さな粒は入れ歯に挟まることがあり、痛みの原因になります。
水状のもの 水などのサラサラした液体は、もっとも 誤嚥を引き起こしやすいため、普段の水分摂取にもとろみ剤をつかってとろみをつけたり、ゼラチンなどでゆるいゼリー状にしたりの工夫が必要となります。
○水分摂取について
高齢者は、1日2Lの水分が必要です。
水分には体の中の不要なものを外に出してくれる働きがあります。水分不足になると、脱水症状や高血圧の原因になることもありますので、気をつけましょう。
茶やコーヒーだと飲みやすいという方がいらっしゃいますが、利尿作用があるため結局体外に水分が出てしまうため、お勧めしません。
スポーツドリンクや、ぬるま湯の白湯は腸に作用しお通じが良くなったりします。
どうしても摂取しにくい方は、オレンジジュースなどを緩めのゼリーにして促すとよいでしょう
○食事の工夫
その方の体の状態に応じて、食事には様々な形態があります。柔らかく仕上げた「ソフト食」、水分でむせが出ないように工夫するための「とろみ」、かむことが難しいために作られる
「ミキサー食」など、どの食形態も、噛む力を補助したり、飲み込む力を支えるために作られています。
食事形態の一つに「きざみ」食というものがあります。
麺類を食べやすい長さに刻んだり、食べやすいようにきざむことは有効だと思いますが、硬い食材(きゅうりや生のニンジン)を小さく刻んでも食べやすさに変化は望めません。硬い食材の
場合には隠し包丁などを使いご自身の噛む力を支えたほうが現実的でしょう。
○食事介助
食事介助は、重度になればなるほど時間がかかり忍耐力の要る作業です。しかし高齢者にとって、「食べること」は日々の楽しみや生きがいをもたらす点からも、非常に重要です。
介助する側も食べてもらえる幸せをかみ締めながら愛情をもって接しましょう。
食事の介助をする場合は、まずなんのために介助が必要かを見極めます。飲み込みや咀しゃくなど、食べることそのものに問題がある場合は、調理法や食事内容に気をつけます。
身体機能に問題がある場合は、自助具の利用や食べる姿勢にも配慮して介助します。また、毎食ごと、食べた量や食べ残した献立を観察すると、自然と食べやすい、食べられる食事を用意できるようになります。
食べ物が気管に入ってしまう誤嚥を防ぐには、食べる姿勢も重要です。テーブルに対して直角に腰かけ、首はやや前傾している姿勢が最もムセにくいとされています。
ほかにも安定した姿勢を取れているか、背中が左右に曲がっていないか、テーブルと腹部の距離は適切か、足は両足とも床に着いているかを確認します。姿勢が不安定な場合は、
イスの背中や腰まわりにクッションなどを入れて安定させます。

握力がなく箸やスプーンがもてない方のための便利な自助具があります。食べこぼしても叱るようなことはせず、防水エプロンなどを利用し、まずは自分で食べられることをほめてあげましょう。
自力で食べられない場合は、介助者は隣に座り、小片にした食事をスプーンで一口ずつ口に運びます。相手のペースにあわせ、ちゃんと飲み込んだことを確認してから
次の一口を運びます。途中で何度か、汁物を飲んでもらうことも忘れずに。施設では、食事介助の必要な方には、都度「おいしそうですよ」「次はどれがいいですか?」など、
食べる意欲を引き出すような声かけを行いながら、介助を行っています。

○口腔ケア
「歯がないから虫歯にならない」と考えやすいのですが、口腔ケアの大切さは肺炎予防につながります。口腔内のばい菌の飲み込み、唾液と一緒に菌が肺に入り込むことで、肺炎を起こすためです。免疫力が下がっている高齢者にとって口腔内の清潔はとにもかくにも大切です。
口腔ケアに関連した商品には以下のようなものがあります。
これらは、高齢にともなって、弱った歯肉を痛めないように考慮されています。高齢者の多くは義歯を利用しています。口腔ケアを怠ると、舌に舌苔という菌が繁殖します。歯がないからといって、ケアしなくて良いというものではありません。舌のケアも大切です。

●排泄

「下の世話はだれにもされたくない」というのが本音ではないでしょうか?自尊心を傷つける事になりかねないデリケートなケアです。なるべく、ご本人ができるように環境を整えられ、
必要な時に必要な援助を受けられるように取り組みましょう。

○排泄時間をチェックをしましょう

尿・便ともに、排せつがあった時間をチェックしていきましょう。1日チェックをすると、だいたいの時間の間隔がつかめると思います。次の時間を予測して、トイレに誘ってあげましょう。オムツを使わずに、過ごすことができるかもしれません。

○水分摂取量をチェックしましょう
ご本人用のコップを使って、一日にどれくらい水分をとれたか確認しましょう。目標は2000mlです。お茶やコーヒーは利尿作用があり脱水を改善してはくれません。理想はぬるめのお湯です。
計画通りには難しいですが、移動するたび、食事のたびなど、何かの区切りごとに水分を取ることを勧めましょう。
○夜間の排せつについて
夜間の排せつを心配される方は就寝3時間前から水分摂取を控えるようにすると、夜間の排せつに響くことは少ないです。
心配という注意が向いて排せつ間隔が短くなる方が見られます。その場合には夜間だけ、オムツを利用するなども工夫の一つです。
○ポータブルトイレの利用

おしっこしたいという感覚はあっても間に合わないとか、夜間の移動での転倒を予防するため等に利用できます。

⇒ポータブルトイレについて

○おむつの利用

おむつで排せつをする場合、当て方によって漏れが出たり、おなかの調子によって、ベッドを汚したりということがおこるかもしれません。漏れが出た場合、ベッドが汚れると、きれいにするのが大変です。
予防的に、防水のシーツなどの利用をお勧めします。
おむつは通気性が乏しいのも事実です。栄養状態が良くなくなると、床ずれの原因にもなりますので、皮膚の状態はよく観察しましょう。

⇒おむつの種類

⇒漏れないおむつの当て方

●入浴介助

入浴は清潔を保つ以外にも、リラックスしたり体の循環をよくするなどの効果があるため、健康上問題がなければ、毎日入っていただきたいものです。
介助の際には、まず浴室等周辺の環境を整えましょう。

脱衣所や浴室はあらかじめ温めておき、洗い場には滑りにくく座りやすいいすを用意します。
滑りやすい床には滑り止めマットなどを用意し、浴槽の出入りには手すりを利用すると便利です。
浴槽をまたいで入ることが困難な場合は、浴槽のヘリに座って回転させるボードや浴槽用リフトなどの便利な用具があります。
手すりの位置やバスボードの使い方などは、看護師やヘルパーなどのほか、介護用品を扱っている店の福祉用具専門相談員など、専門家の指示を仰ぎましょう。

要介護認定を受けている方で、入浴を嫌がったり家での入浴が困難な場合は、介護保険で通所介護訪問入浴介護を利用することができます。ケアマネジャーに相談しましょう。

●衣服・履物

○高齢者の方の衣服の選び方
  1. 袖周りが広すぎないこと
    広すぎるそで口は家事をしたときに、袖に火が移ったり、移動の際に引っかかるなどのリスクがあります。
  2. 前身ごろが長すぎないもの
    前身ごろが長いことで、杖をついた際に、足元が見えず、転倒の原因になります。
  3. 袖繰りが大きめであること
    袖繰りが大きいと衣服の着脱の時に手を通しやすいです。

衣類や生活用品(食器などの自助具)は、介護保険の対象ではありませんが、高齢者が一人でできることを手助けしてくれ、介護者の介護負担も軽減してくれる優れものが数多くあります。

⇒介護便利グッズ 日用品・衣類の選び方

衣服の着脱の仕方

  1. 肩関節の可動域(関節の動かせる範囲)が狭いほうから袖を通します。
    この時に、袖繰りが大きいと、手を通しやすくなります。一方の方の先から他方の脇の下までの長さが大きいと着脱がしやすいので選ぶときのポイントにしてください。
    前開きではない衣服の場合は、頭を先に通し、可動域の狭い手を通し、最後に可動域が広いほうの手を通します。
  2. 脱ぐときは、可動域が大きいほうから脱いでいくことで、負担が軽減されます。

●外出・移動介助

○外出
外出することは生活に楽しみを添えたり、介護予防にとっても大切ことです。さまざまな方と関わる事が刺激や頭の体操になるからです。
人に話して、受け止めてもらったり、自分の意見を伝えたり、「きれいと思われたい」「楽しいと思ってほしい」などの様々な思いに触れることで、生き生きしてきます。
デイサービスやデイケアに「気疲れ」するから行きたくないという方が見られますが、実際行きはじめると楽しめるということもよく聞く話ですので、根気強く勧めてみましょう。
  • ※車いすでの移動の心構え
    1. 車いすには用途に合わせて種類があります。外出の際には、軽量で、折りたためるものが便利です。
    2. 車椅子用のトイレやスロープが、目的地や到着までの休憩所にあるかどうかを把握しておくと便利でしょう。
    3. ガイドヘルパーなどを利用すると、より安全に、案内をしてくれるでしょう。

○移動介助
体の半身にまひがある「片まひ」の方や、関節系の病気で歩行に障害が出てきた方の介助は、非常に重要です。
  • 車いすを利用している場合

  • ベッドから車いすへ、車いすからトイレへなど、頻繁に移乗(乗り移る)のための介助が必要となります。ありがちなのが脇の下に両手を入れて、上半身を抱きかかえるようにする介助ですが、
    これは腰を痛める要因になります。
    こうした移乗介助には、人の体の動きをよく理解し、介助される側の人の力も借りて、呼吸を合わせて行うことで、余分な力をかけずにスムーズに行うことができます。
    プロの介護士や看護師が技を教えてくれるでしょう。

  • 杖や歩行器を利用している場合

  • 杖は基本的に健康な側で持ち、杖→健康な足→障害のある足の順で歩行します。
    介助する人は障害のある側に立ち、前や後ろに倒れそうになったときに、すぐに手を出せる位置につきます。また、階段では、昇り階段のときは一歩後ろで、下り階段のときは一歩前から介助します。

●リハビリ

退院後、入院前の生活に戻すため、また、現在の機能を維持するために、リハビリがあります。
リハビリをするにあたって大切になってくるのは、どこが動くかではなく、どれくらい生活が不便なく過ごせるかということです。
年齢や、病気によって、できないことが増えてきたとき、運動することが、今の状態を保つために大きく役立ちます。

病気によってできた障害のリハビリの場合は、痛みのコントロールなども出てきますので、専門家(理学療法士PT・作業療法士OT・言語聴覚士STなど)の指示に従って行うとよいでしょう。
デイケアとはデイサービスと違い、リハビリを目的にした通所サービスです。
専門のスタッフがいて、その方に合った、プログラムを組んでくれます。
最近ではデイサービスでも、筋力を維持することを目的に運動に特化した事業所が出てきています。

また、外出が難しい方の場合は、訪問でリハビリサービスを受けることができますので、ケアマネジャーさんと相談するとよいでしょう。

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